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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第139回 ”円安包囲網” (2007/06/26)
24日に国際決済銀行(BIS)が発表した年次レポートで、今後円が強含む可能性があり、円安を予想した投資に慢心すべきではないとの見解を示した。かなり大胆な意見であるが、今のところ市場はあまりこれに反応していない。また、日本の当局の姿勢にも変化がでてきた。尾身財務相は「最近の為替の動向については、注意深く見守っている」との認識を示した。更に「国際金融市場全体の状況について、G7等で意見交換を行っているが、特に為替相場については、市場が一方向に偏って行動することのリスクを認識することが重要である点については各国間で意見が一致している」と円安への懸念を示唆した。
これまでは円安進行に対して、当局も市場に任せるという姿勢をとってきたが、あまりにも円安進行に歯止めがかからないため、いよいよ姿勢を変える必要がでてきたということなのであろう。
現状、円を取り巻く環境に何も変化はないが、相場も行き過ぎれば当然マイナスの影響もでてくる。まず、円安が極端に進めば、国際社会からの批判の声が高くなってくる。外国との貿易に経済を大きく依存している日本はこうした批判には配慮をする必要があり、今回姿勢をやや変えたのもこうしたことが原因の1つとなっていると想像できる。また、元来、日本の通貨当局は為替レートを監視するに当たり、実質実効為替レートを見ているというよりは、米ドル円のレートを見ていた。日本の経済はそれだけ米国に依存してきたからである。
ここ数年、記録的な円安の展開となっているが、米ドルに対しては、落ちた着いた動きをしていた。しかし、今年に入って、米ドル円での円安が進行し始め、今月一時124円台にまで上昇した。当局は特定のレベルを気にしているわけではないというのがいつも公式見解であるが、それは表事情であり、やはり実際は警戒水準というものを持っているはずである。おそらく現状ではドル円で125円近辺なのであろう。その近辺までドル円が近づいてきたことで、いよいよ財務省も警戒感を強めてきているということなのではないだろうか。
円安になっていけば、当然、今後のインフレ要因となってくる。資源価格の高止まりしている状態で円安が極端に進んでいけば、当然輸入インフレ(コストアップインフレ)を招く。そのため、消費者物価指数がどこかの段階で急上昇をはじめ、それに合わせて利上げのスピードが加速していくという流れとなってくるであろう。そうなれば、元々この円安は円金利が相対的に低かったことで起きている現象であるため、常識的に考えれば金利の急上昇は円高を招く。従って、円安が進めば進むほどインフレが加速することで金利上昇圧力がかかり、将来の円高リスクが高くなる。更に、円安になればなるほど、国際社会から見て日本は割安感が広がり、例えば企業買収などにしても、円安になれば、それだけ買収資金は安くなるため、日本企業が外国企業に買われやすくなる。こうした買収資金の外国から日本に持ち込まれればそれによる円買いにより円高圧力がかかるということも想定できる。
さて、以上円を取り巻く環境が少し変化し円高リスクがでてきたことを紹介したが、今回の市場展開は正直予想がつかない。それは、今までと参加者の主体が変化してきたことで今までと反応が違ってしまう可能性があるからだ。これまでの感覚でいえば、こうした当局の姿勢の変化に投資家が敏感に反応し、最初の段階ではかなりの円高になったケースが多い。しかし、今回の円安は個人投資家が大きな役割を演じており、個人投資家はこうした事態に対する経験が殆どないために警戒感を示さず単に円高になると円を売るという行動にでてくるかもしれない。そうなると、かつてこうした局面で円高になるのを経験してきた金融関係者が想像していくのとは違う市場反応となってしまうかもしれない。 こうした当局の姿勢に変化が起きたときの今までの一般的なパターンは下記のようなものである。
1.通貨当局が現状の為替レートに懸念を示した最初は市場がそれに大きく反応する。2.時間が経つにつれ、その影響が薄れてきて、市場もあまり気にしなくなり、相場も元の流れに戻る。
3.当局が本気になって、流れを止めようとし始める。(介入の実施など)
4.介入も最初は効果があるが、回数を重ねるたびに市場が軽視し始める。
5.介入むなしく流れは一向に止まらない状態が続く。これに対して、当局はひるむことなく徹底的に介入を
継続する。
6.長期間に渡る介入の効果がボディブローのように効いてきて、相当時間が経過した後で次第に効果が
現れ最終的にはトレンドが反転する。
今回まだ、最初の段階であるが、個人マネーはこの@の反応すらしないかもしれない。ここ2-3年、外人投資家はこうした日本の個人マネーの動向を読み切れず、為替相場で何度も失敗してきている。今回はどういう展開となっていくのが、正直私もよくわからない。これからどういうことが起きてくるのか、目を凝らしてよく見ておきたいと思っている。
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