マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第135回 “方向感を失った為替相場” (2007/05/29)

年初から4月の中旬にかけて激しい動きを続けてきた為替市場であるが、ここのところ動きがすっかり止まってしまった。数ヶ月大きな動きを見せると、その後しばらくの間揉み合いに入ってしまうということは、為替相場ではよく起きる現象であり、今回もまたそうした現象が起きているのであろうと推測できる。足元の各国の環境を見ても揉み合いになってしまっている状況はわかる。まず円を取り巻く環境であるが、先週末の国内消費者物価指数の結果で日銀による早期利上げ観測は後退した。しかし、一方で雇用環境がタイトになってきているおり、人材確保が困難になった企業が賃金の引き上げをするケースも出始めるなど、物価上昇の可能性を予感させる動きもでてきている。そのため、円金利の要因から大幅な円高や円安が進行していくという可能性が低い状態となっている。(もちろん、円の低金利による緩やかな円安効果は依然残っているであろうが)

ユーロ圏は6月の利上げは確実視されているものの、それ以降の利上げに関しては、ECBも明確な見通しを出していないので、今後の状況をしばらく見守る時期に入っている。オセアニア両国も当面金利の据置きが予定されていて、しばらく波乱が起きる様子はない。敢えて言えば、ここ最近カナダの利上げ観測、イギリスの利上げ期待などでカナダドル・ポンドドルが上昇する局面があったものの、その影響も一度市場に織り込まれ、ここから先は更なる材料が必要になってくるだろう。

こういう状態では、投資家もなかなか動きがとれなくなってしまう。相場がレンジに入ってしまうときは、それまで相場を動かしてきた材料に投資家が飽きてしまい、その次の材料もなかなか見つからない状況になっているときが多い。今回のケースもこうしたパターンに陥ってしまっていることが原因であろう。 おそらく今後しばらくは投資家にとっては次の新しい材料がでてくるのをじっと待つ状態が続く。新しい材料がでてくれば、それに向かってまた行動を起こすために市場も動きだすであろうが、逆に言えば、材料がない状態が長く続けば益々相場は膠着してしまうかもしれない。(膠着状態が続くのであれば、金利を稼ぐという手段が有効になってくるので、それはそれでやり方があるが)

さて、今回相場が膠着してしまったもう1つの理由について考えてみたい。それは、最近の米国の景気の持ち直しである。今年の相場は「ドル安・円安」という現象になっていたということは、これまで何度かご紹介してきたと思う。米国の住宅市場の落ち込みなどによって、市場関係者の中に米金利の利下げ観測が高まり、それに伴ってドルからの資金逃避も発生していた。しかし円に関しては国内からの大量の資金流出などが原因となって、ドル安にならなかった結果、米ドル・円に対してその他の通貨が上昇してきたという現象が起きた。それがここに来て状況に変化が見えてきている。米国の景気動向に持ち直しの兆しが見られ、金利も上昇してきたことで、ドルにも買い戻し圧力がかかっているのである。それまで欧米の投資家はドルショートを積み上げてきたが、米国経済の持ち直しでドルの買い戻しを行っている。しかし、こうしたドルショートは対欧州通貨、オセアニア通貨などが殆どであったため、どうしてもドル買いはこれらの通貨に対するものが中心になり、その結果、対円でのドル買いのスピードは他の通貨に比べて鈍くなる。そうなると、米ドル円ではゆっくりとしたドル高円安となる一方で、他の通貨に対しては円安とはならず、他の通貨対米ドルに対して円よりも下落する影響でむしろ若干円高になるという奇妙な現象も起きる。つまり、これまでドル安と円安がセットになっていたので、ドル高になると円安傾向も止まってしまうということであるが、それが円相場の膠着に繋がっているという面もあるかもしれない。従って、米国経済の今後の動向も、今後注目しておかなればならない点の1つであろう。

いずれにしても、どこかで新しい「変化」が起きるまでは、こんな相場にまだまだ付き合わなければならなそうだ。

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