マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第133回 “個人投資家の時代” (2007/05/15)

前々回のコラムで個人投資家とプロの投資家について少しお話をしたが、今回もそれに関連した話をしたい。

先日、ある商品先物系の投資顧問会社のファンドマネージャーと話をしていたときのことである。彼は、商品での運用の世界ではかなり有名な人物らしいが、最近は依然と比べてめっきり儲からなくなったと言っていた。理由を聞いてみると、商品市場の法改正によって、個人投資家が商品市場に入ってこなくなった事が原因であるとのことだった。商品相場の世界では顧客が狼狽買いや狼狽売りをすることで、市場が大きく歪むことがあり、プロの投資家はその歪みをうまく取って儲けていたが、最近はそういう投資家がいなくなってしまったので、市場が歪まないという話であった。商品相場での歪みというのは、専門ではない私には若干理解しづらい点もあったが、ひとつ言えるのは下手な人が市場にいないとなかなか儲かりにくいという話は、まあ一理あるなと感じた。

しかし、これを為替市場に置き換えて考えると、少し様相が変わってくる。私は証拠金の取引に関わってから3年ほど経つが、為替の個人投資家にはこうした狼狽買い、狼狽売りをする人が比較的少ないのではないかと感じる。  まだ、データを検証していないので、確かではないが、IMMのポジションと、外為どっとコムや東京金融先物取引所の発表している個人投資家のポジション状況を見ると、若干傾向が違うような気がする。

IMMのポジションは相場が一方に動くとその方向と同様にポジションが膨れていく傾向があるように感じる。例えば、ユーロが上昇すればするほど、IMMでのユーロの買いポジションが増加するという傾向である。逆にユーロが下落すれば、買いのポジションが減少する(或いは売りのポジションが増加する)という展開となる。しかし、国内の個人投資家の動向を見ると、IMMの示す結果と異なる傾向を示すことがしばしば起きている。つまり、ある通貨の相場が上昇するとその通貨の買いポジションが減少するという傾向がしばしば見られるのである。これは、その通貨が上昇すると一旦利益を確定しておこうという利食いの売りが先行するということである。

また、最近円高の局面でも個人投資家の行動は冷静である。例えば、ドル円が下落した場合、狼狽売りがでるどころか、下がったところを狙って、値ごろ感からドル買いが殺到するという現象が散見される。今年3月にドル円が115円台にまで下落したとき、或る米系投資銀行がドル円を下に向けさせようとしたが、日本の個人投資家による激しいドル買いに阻まれ、仕掛けに失敗し、やむなく買い戻したらしいという噂が飛んだ。ことの真偽はわからないが、115円台で個人のドル買いが凄まじかったのは事実のようである。

一般的にいって、為替のディーラーは、動く方向についていくことが好きな人種である。相場が上がれば、どんどん買い増しをして1つの上昇でできるだけ大きく稼ごうとする。相場が下がるときも同様である。だから、IMMのポジションなどは上記のような傾向が見られるのも全く不思議ではない。しかし、商品相場のケースと違って、為替市場での個人投資家の行動は冷静で「カモ」にならない。それで、結局プロが負けてしまうという展開が本当であるとすると何とも愉快な話である。

市場の変動率が低いので、こういう個人投資家のやり方がうまくいってしまうのか、はたまた、個人投資家のこうした冷静な行動によって、相場が安定してしまうのかは鶏と卵のような議論である。しかし、少なくとも現在の市場環境においては、こうしたやり方のほうが有効であるということはいえるのかもしれない。

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