マット今井「トレーディングのつぼ」バックナンバー

第129回 “米国金融市場の謎” (2007/04/17)

以前、このコーナーで現在の状況が「ドル安・円安」であるということをご紹介した。それ以降もその流れは止まらない。ドル円をみると119円台と非常に安定した動きをしているように見えるが他の通貨に対してはドル安がドンドン進行している。ポンドドルは1ポンド=2ドルに迫るところまで上昇しているが、これは実に15年ぶりの高値である。また、豪ドルも対米ドルで0.83台と11年来の高値を上抜けした。ユーロも1.35台と史上最高値である1.3666に後100ポイント程度のところまでユーロ高ドル安が進行してきている。まさに対円以外ではドル全面安である。

しかし、一方、為替市場以外の金融市場を見てみると全く違う状況が見えてくる。まず、株価は1万2千ドル台を堅持し、多少の調整はあるにしろ、しっかりとした上昇トレンドを形成している。また、米国の長期金利は10年物国債の利回りで4.7%台を維持し、この水準はここ2年ほどでほぼ平均的な水準である。すなわち、株価市場や金利市場では米国経済に対して、楽観的な見方が多いということができる。(長期金利は米国のインフレが高止まりしているために下がらないという面もあるが)この為替市場と他の金融市場の温度差は一体どう説明すればいいのであろうか。

それはおそらく需給バランスによるものではないだろうか。現在の世界情勢を見ると、2つの大きな偏在が存在していると考えられる。その1つはアジア諸国が安い労働力を使って、安価な製品を作り、それをアメリカが買うということによる偏在である。その結果、アジア諸国特に中国の外貨準備が急増していることはいうまでもないであろう。先日発表された今年3月の外貨準備は1兆2020億ドルとなり、前年同期比で実に37%以上の伸びとなっている。 もう1つは、資源輸入国から資源国への富の移転である。ここ数年来のエネルギーや鉱物などの資源価格高騰により、資源輸入国の資源国への支払い金額が急増したのは言うまでもない。オーストラリアなどはその恩恵を受け、景気も非常に堅調に推移し、その影響で豪ドルも堅調である。

特に恩恵を受けているのは中東やロシアなどの産油国である。現在資源の支払いには米ドルが使用されているので産油国は代金を米ドルで受け取るわけである。 中国はここ数年、外貨準備を分散するために一部をユーロにシフトしている。これは他諸国の中央銀行も同様であろう。そうなると当然市場にはドル売りユーロ買いが発生して、ユーロ高の要因となる。また、中東諸国は最近、オイルマネーをイギリスや欧州対立に積極的に投資しており、そうした動きもドル売りの要因となる。先日、ある方から聞いた話ではロンドンの一等地にあるマンションの最上階1000平米(約300坪)が日本円で約230億円にて取引されたそうであるが、これを購入したのは中東の人であったそうである。こうしたオイルマネーが欧州に流れ込んでいるのである。また、プーチン氏が率いるロシアも欧州大陸に積極的に投資しているという話もよく聞く。

このような行動は必ずしも、米国の経済状態という理由に基づくものではない。政治的な問題やポートフォリオの分散という意味もある。これがドルを弱くしている本当の原因ではないだろうか。米国がドルを沢山刷って、それで代金を支払う。そうすると市場にドルが余り、そのドルを誰かが売るのでドルが下がる。結局は米国の経常収支赤字拡大がドル安を招いているのかもしれない。

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