マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第128回 “キャリートレードの定義” (2007/04/10)

最近、外為市場では「キャリートレード」という表現を多く目にするようになった。しかし、見ているとこのキャリートレードという言葉はかなり拡大解釈されて使われているように感じる。

そもそもキャリートレードとはどういうものを指すのであろうか? これに対して明確な定義を見たことはないが、おそらく「低金利のもので調達して、高金利・或いは高成長が期待できるもので運用すること」という意味を示すと考えられる。また、ある通貨などの「低金利」に着目してそのメリットを享受するという行為の一部もこれに該当するかもしれない。

この場合「円キャリートレード」とは円の金利が相対的に「低い」ということを利用して、このメリットを享受しようとする行為と考えてよいであろう。 さて、ここで考えなければいけないのは、円キャリートレードとは本来、円を持っていない人が「円を借りる、或いは調達する」ということで他のものに投資するという行為だけに限定すべきではないかというのが私の意見である。 例えば、外国人が日本の金利が低いことに目をつけて、円を借りたり、円建ての債券を発行して円を調達し、それを他の投資に振り向けることをやっていれば、これは典型的な円キャリートレードである。この場合、日本以外に投資をしていれば、借りた円を外貨に換えて投資をするために円売りが出て、円安要因となる。 最近スペイン、オーストリア、或いは韓国などで流行っていると一部で話題になっている円建ての住宅ローンなどは、円の低金利に目をつけ、円で借りてこれを自国通貨に換えて住宅を購入する。住宅を購入することを投資と考えれば、これも円キャリートレードと呼んでもよい。

しかし、問題なのは、日本の個人投資家、或いは機関投資家が海外に投資しているものも円キャリートレードに含めていることである。考えてもみていただきたい。世界中の投資家がいろんな国に投資をしているわけで、これは日本に限った話ではない。また、円の金利が高いときでも日本から海外への投資は行われていた。しかし、今はたまたま円の金利が安いということで、如何にも円キャリートレードのように呼んでいるが、これは今に始まった話ではない。もちろん、最近、円の金利が低いことで国内投資家が海外に投資先を求めているという面もあるため、一部はキャリートレードと同じような発想で投資されているもののあるであろう。しかし、だからといって、日本人が海外に投資している分をまとめて「円キャリートレード」と呼ぶのは、あまりにも乱暴である。ただ、証拠金取引でレバレッジを掛けてスワップ稼ぎで円売りをずっと持っているような場合は別である。こういう取引では本来の証拠金よりも大きな金額を取引しているわけで、そういう意味では無い円を売っているのであるからキャリートレードに含めてもよいかもしれない

また、普通のトレードをしている人が、円売りのポジションを取っていることに対しても、円キャリートレードと呼ぶ傾向がでてきているが、これも全く不思議な話である。これは円安になることを期待して円を売る単なるトレーディングであって、円キャリートレードと呼ぶような性格のものではない。こういう取引はちょっと円高になれば直ぐに解消される短期売買の一部だからである。 マスコミなども「ヘッジファンド円キャリートレード再開」といった表現を使うと如何にもそれらしいように聞こえるために、最近は好んでこの表現を使っているが、実態は全くそうではないのである。何故なら、本来低金利を享受するための取引であるならば、長期投資でなければメリットはない。それにも関わらず、短期の円売りまで「円キャリートレード」と呼ぶのは如何にもおかしな話である。

ちまたで言われている「円キャリートレード」というものは、誇張されている可能性が高く、かなり割り引いて考えておく必要はあると私は考える。

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