マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第127回 “表現から読む” (2007/04/03)

ここ2ヶ月ほどの間に、日米欧の金融当局のスタンスに変化が現れてきている。今回はそれについて少し考察してみたい。

まず、日本。日銀は今年2/21に0.25%の利上げを実施し、短期金利目標レートを0.5%とした。この会合の後の会見で、福井総裁はそれまでとは全く違う論理を持ち出した。それは「年率2%も成長率がある日本のような国の経済は、たとえ物価が上昇しなくても金利水準が0.25%とか0.5%というのは如何にも異常である。」というものである。それまでは消費者物価の動向を見ながら金利を調整していくというスタンスであったが、この発言により、物価水準に関係なく「金利の正常化」という理屈に従って金利を上げていくという姿勢に転換したのである。つまり、日銀は今年、金利を上げていくという宣言としたともとれる。後はどれぐらいのスピードで上げていくかという点に焦点が集まるが、先日福井総裁は「緩やかに調整していく」と発言しているので、「緩やか」とはどれぐらいのスピードなのかをこれから市場は探っていくことになる。

次に米国である。米国は前回のFOMCの声明文でそれまでとは違った表現を使った。重要な部分は次の2点である。ます、それまで必ず使っていた「更なる利上げの可能性」という表現を削除したことである。2点目は住宅市場に関して「調整が続いている」という表現を使ったことである。この表現により、住宅市場の落ち込みはまだ続いているという比較的弱気の見方をFOMCで示したことである。これにより、FOMCでの利上げの可能性はかなり遠のいたと考えてよくなった。 
しかし、金利市場ではこれ以上の反応をし、夏までに利下げがあることを織り込んでしまった。これは少し読みすぎである。現状の米国の消費者物価指数のコアは年率で+2.7%と中銀が目標としている+2%を大きく上回っている。こういう状態で利下げをするのは、余程の緊急事態でなければ考えられない。となるとFRBが利下げをするのは、消費者物価指数が下落してくるか、或いは住宅市場などが緊急の対応を迫られるほどの崩れ方をした場合のどちらかであろう。現状、そうした明確な傾向が見られない中で、利下げを大幅に織り込んでしまうのはやや行き過ぎだと個人的には考える。

最後にECBである。ECBは3月8日に0.25%の利上げを実施し、政策金利を3.75%とした。決定後の会見で、トリシェ総裁は2つの表現を変えた。まず、金利水準を「LOW」から「MODERATE」に変えた点で、もう1つは「緩和的」から「緩和的な側にある」という表現に変えたことである。この2つの表現の変化は、今までは金利が通常より低い水準であったが、今はやや通常より低いがかなり中立に近づきつつあるということを示唆している。もう少し踏み込むと、今まで継続的に金利を上げてきたが、そろそろ一旦(利上げを)終了する時期が近づいてきているということを示している。実際、トリシェECB総裁はこの表現の変化が「意図的」であったと発言している。ここから判断できることはおそらく6月にもう1度0.25%利上げをして4.00%とした後は、利上げが休止される可能性がでてきたということであろう。

以上の変化から考えられることは、

  1. ドルは当面弱い状態が続く。しかし織り込みすぎているので短期的には反動がくる可能性はある。
  2. 日銀は、スピードはともかく利上げを続けていくつもりであり、(当面は円安の流れに変化はなくても)将来的には円高のリスクがでてくるかもしれない。
  3. 今までユーロは上昇し続けてきたが、今年ユーロはどこからピークを打つ可能性がある。
というところであろうか。現在の為替市場は金利動向に大きな影響を受ける。そのため、金融政策を決める中央銀行の使う表現の変化には十分注意をしておく必要があろう。

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