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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第126回 “本筋を見る力” (2007/03/27)
ここ2、3週間市場は徐々に安定し、再び株高・円安という流れに戻ってきている。今後の展開を占うにあたって少し、「筋」という観点から考えてみたいと思う。先日、外為どっとコムの大型セミナーで現役ディーラーが集まってパネルディスカッションをした際、全員が今年は円高という予想で一致したという話を聞いた。私はこれを聞いたとき、これでもう円高にはいかないかもしれないなと感じた。人間というのは直近の値動きに大き影響を受ける。大きな円高局面になっているときは、どうしても円高になると殆どの人は考えてしまう。しかし、少し時間が経って、同じ人間に話を聞くと市場の環境の変化に影響を受けて全然違うことを言い出す。大方の人は日和見主義なのである。
今の金融機関にいるディーラーは殆どがデイトレに近いトレードをしている。従って普段から大局的なことは考えずに日々の上げ下げに一喜一憂しているディーラーが大半を占める。彼らにとって、半年後、相場がどうなっているかなど関係のないことであるので、そうしたことを実はあまり真剣に考えたことはない人が多いはずである。こうした人たちの見方が偏ってきた場合、相場は転換点を迎えつつあると考えるのも有効である。
また、ディーラーの発想でおかしい点はもう1つある。それはすべてを米ドル中心に考えてしまうということである。 以前から何度も繰り返して言っているが、米国の経済が落ちるので円高になるという発想も米ドル中心の取引をやってきた金融機関のディーラーの偏見である。今やドルは相当減価し、既に大幅なドル安は進行している。円以外の主要通貨で見てみると豪ドル/米ドルなど11年ぶりのドル安の水準になっている通貨もある。しかし、ドル円に関して、米ドル側の要因ではなく円からの要因に影響を受けてドル安とならないのである。しかし、米ドル中心に考えてしまうと、どうしてドル円がこんなに落ちないのかが理解ができなくなってしまう。これはドル中心の為替市場で取引を続けてきたディーラーの弱点でもある。
もう少し整理して考えてみる。21世紀に入ってからの為替市場では2つの大きなトレンドが見て取れる。1つはドル安、もう1つは円安である。まず、ドル相場から見てみたい。下の最初のグラフは2000年からのドルの実効レートを示すドルインデックスというものである。これを見ると2001年からドルが確実に減価していることがわかる。2004年から米国が金利を上げ始めたので、金利差によりドルの下落は止まっているが、金利が上昇していってもドルは上昇していないのがわかる。これは投資家がドルに対して常に懐疑的に見てきた証左である。本質的な議論をするのであれば、ドルは既に相当下がってきていることを認識した上で今後のドル相場について予想をしなければならない。米国の景気後退は実は市場は事前にかなり察知して、織り込んでいると考えられるからである。
もう1つは円安の流れである。2つ目のグラフは豪ドル円のチャートであるが、2000年から一方的な円安の流れが続いている。どうしてこういう流れになっているのか、これを考えるのが「筋」である。紙面の関係上、今回詳しくは書けないが、これはゼロ金利という環境の元で、日本の投資マネーが海外に流れて出続けていることが1つの大きな要因である。日本企業の海外進出による直接投資も円安要因となっているかもしれないし、最近話題になっている円キャリートレードも多少は影響しているかもしれない。しかし、最も大きな要因はジャパンマネーの海外流出である。
こうした行動の背景は円金利が低かったことに加え、小泉改革による「貯蓄から投資へ」の誘導という意図的に作られた構造的な変化がもたらしたものである。となれば、途中の上げ下げはともかく、大きな円安の流れが変わるのはこうした投資家の行動パターンに変化があったときであろうというのは、誰でも簡単にわかる話である。私がここで言いたいのは、物事には必ず原因があるし、また相場は長期的に見れば実は理屈通りに動いている点である。今後の相場予想を語るにあたって、こうした「本筋」に変化があるのかどうかの議論をした上での「ドル安」或いは「円高」予想であれば納得がいくが「筋」をはずした理論構成にはどうしても耳を傾ける気がしない。 

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