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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第92回 “政治相場は政治で終わる”(2006/05/15)
今回のドル安円高相場の背景については、今まで、いろいろなところでご紹介してきました。しかし、どんな相場でも果てしなく上がり続ける、下がり続けるということはありません。では、今回の相場はどこで終わるのでしょうか?少しそれを考えてみたいと思います
もともと政治の世界は言葉の世界です。いろいろな会議では、その声明文をどうするかで喧々諤々の議論になります。そして、出来上がった声明文の中には作った人の意図が隠されてくるということです。特に定期的に行われている会議での声明文が前回を違う内容になっているときは、そこには必ず、何らかの意味があります。ですから、市場関係者はこうした会議での声明文の一言一言をとても注意深く見ているわけです。中央銀行が金利の政策を決めるときの会議での声明でこの先金利が上がるのか、下がるのかというのを探るというのも同じです。
また政策の権限を持っている政治家の発言も非常に重要です。政治化は言葉を操るのが仕事ですから、政治家の発言は一見おかしな発言でも、何か意図して言葉や表現を選んでいるものです。ですから、政治家や官僚の発言も注意深く聞いていなければいけません。
5月始めに、アメリカのアダムス財務次官が、「(為替の)介入はしないことが適当である。日本は円安に誘導するようなことを口に出して言うべきではない」と牽制をしました。人のいうことを制限しようとするこの発言は極めて異例な発言です。
この発言の後、日本の財務大臣等が為替相場について発言していますが、これが今までの発言と違っています。
今まで、為替が激しく動くと、日本の当局は@為替相場はファンダメンタルズを反映すべきである A急激な変動は好ましくない B為替の動きを注視していく C必要とあれば断固たる措置を取る という4つのことを発言に入れるのが常識でした。 しかし、今回の発言を聞いていると このCが抜けていくことがわかります。これを聞いたとき市場関係者は「ああ、やっぱり日本は釘を刺されてしまったのかな」と考えても不思議はありません。ことの真偽はともかく、みんながそう思ってしまったということが重要なわけです。 また、ブッシュ政権がドル安に誘導したいときは、「強いドルはアメリカの国益である。しかし、為替相場は市場が決めるものである」こういう発言をするというのが市場関係者の中での常識となっています。2004年の大統領選挙の時にこういう発言をしながらドル安を容認したことがあるので、そう思っているわけです。
最近、アメリカの要人は為替のことに関して、発言をしていませんでした。しかし、4月28日にスノー財務長官が「我々は強いドルを望んでいる。しかし、為替相場は市場が決めるべき」という趣旨の発言をしました。
この発言はとりようによっては、4月22日のG-7の声明をドル安誘導ととってしまった市場を冷やすために言った発言であるとも取れなくはなりません。しかし、2004年にこういう方法を使ってドル安を演出したことをみんなが覚えているので、またドル安キャンペーンが始まったと多くの人が思ってしまったということでしょう。
このような感じで、いろいろな文章や発言の中から市場は政策の変化を嗅ぎ取ろうとします。現在はドル安が続いていますが、極端なドル安はアメリカにとっても、世界経済にとっても決していいことではありません。行き過ぎればどこかで、政治サイドから市場の過熱感を冷まそうとする動きが必ずでてきます。それは、この流れが始まったときと同様、声明文は政治家の発言に表れてくるはずです。
今後でてくるいろいろな発言等を注意深く見ておき、変化を敏感に察知するようにしたいものです。
「政治的に動かされた相場は政治が止めるまで流れは変らない」
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