■ ドル、「有事の買い」は幻想
11日 15時3分
11日の外国為替市場でアジア・オセアニアの取引時間帯の円相場は売りが先行。朝方に1j=119円78銭と10日のニューヨーク市場で付けた安値(119円77銭)を下回り、昨年12月14日以来の円安水準となった。過去の米雇用者数が上方修正されるなど、米景気とドルの慎重見通しを後退させる材料が続いたほか、北朝鮮情勢の緊迫を受けて「有事のドル買い」が復活したとの声もある。しかし、「有事」は米国も無縁ではない。国際マネーを米金融市場に引き寄せる要因としては力不足だ。
北朝鮮問題ではアジアの株式相場や通貨に一時下落圧力がかかったため、リスク許容度の低下した欧米勢の一部がアジア通貨建て資産の持ち高を圧縮。特に、短期の借り入れコストが5%超とかさむドルの資金返済を優先したもようだ。一方、こうした取引には安全資産への逃避という面はない。米同時多発テロ事件が2001年9月に発生して以降、米国といえども安全な場所ではないとの認識が広がっていることが尾を引いている。
しかも、米国には物価再上昇への懸念がくすぶっており、究極の資金逃避先でインフレヘッジ(回避)目的の資金が流入しやすいとされる金相場とドルとは逆相関が成立しやすい。ユーロの台頭で基軸通貨としての存在感も薄れてきた。国際収支の不均衡というアキレスけんも抱えたままだ。
「ドル強気派」のよりどころの一つは米金利が長期、短期ともに日欧よりも高いことだが、金利収益をすぐあてにできるほどには格差は開いていない。為替差損回避(ヘッジ)コストも悪化しているため長期マネーの人気拡大は望み薄。日本では今年前半、10年物国債利回りが一時2%前後まで上昇するなど円金利資産の投資妙味が徐々に高まっており、「為替変動リスクの管理にかかる手間などを考慮すれば外債の運用比率を引き上げる状況にはない」(国内投資信託のファンドマネジャー)という。土台が安定しないようなら安全資産としての米国債の価値も下がる。市場では、2003年3月に始まったイラク戦争の直後に起きた「有事のドル売り」の記憶がまだ新しい。北朝鮮の核問題でも米国との関わりが強く意識されるようならドルの悪材料になりそうだ。(GI 今 晶)
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