smileさんのお嬢さんへ。
- 2009年8月24日(月)14:57
- この記事についてつぶやく
- ブックマーク





ブログのお書き込みでお馴染みのsmileさんから、以下の投稿があった。
これは、塾長が先週木曜日に出演したテレビ番組で、“円高のディメリット(短所)ばかり騒がないで、円高のメリット(長所)も考えましょう。”と言ったことに対してのご質問であるが、小学生のお嬢さんにも分かる様に説明してみたい。
*娘(小学生)からの質問です。
社会の教科書に日本は加工貿易の国と書いてあります。円高になりパパや酒匂さんが安くワインを買えるため得をします。パパや酒匂さんはたくさんワインを飲んでおおわりです。しかし、工場は加工してどこかの国に売って利益をえるので学校の先生は円安の方が得すると言っていました。工場は円安でもうけるより円高で材料を安く仕入れるほうがたくさんもうけられるのですか。
アンドレアがこの夏に日本に遊びに来てくれたので、アメリカ人は日本に興味があると思います。*
我が国の小学校の教科書に、未だにこんな事が書いてあり、先生が“円安の方が得する。”と生徒に教えていることにびっくりした。
我々は、小さい頃から“円高は駄目だ。”と洗脳されているんですかね?
さて、加工貿易とは、随分久し振りに聞いた言葉だが、辞書によると、
かこう‐ぼうえき【加工貿易】
原料・半製品を輸入し、これを自国内で加工のうえ製品として輸出する貿易。
大辞泉
とある。
要するに、我が国は海外から原材料を輸入し、これを技術を使って加工して付加価値の付いた製品として海外に輸出している、ということである。
日本が輸出立国と言われて久しい。
もし我が国が本当に輸出立国で、輸出ばかりに頼っているのであるなら、円高は我が国経済にとって、大きなマイナスである。
1ドル=120円の時に100万ドル相当の輸出をすると、1億2千万円の代金が手に入るが、1ドル=100円になると1億円、1ドル=80円になると、8千万円しか手に入らない。
為替相場の変動により、20%も損益状況が悪化するのは、これは大変である。
でも、これが為替というもの。
大幅な円安の時だってあったではないか?
変動相場制に移行する前は、1ドル=360円、そして308円。
その後円相場は高騰を続け、1995年には史上最高値の1ドル=79.75を付けたが、長続きはしなかった。
1998年には、1ドル=147.66まで戻すこととなるが、その途中、115~125円では何とドル売り・円買い介入が行われた。
あれ?
我が国は加工貿易を得意とし、輸出立国で、円安がいいのではないか?
何故、金融当局はそれを止める為のドル売り・円買い介入をやるんだ?
答えは簡単。
我が国金融当局にとって、行き過ぎた円高は勿論絶対に駄目であるが、実は行き過ぎた円安も駄目なのである。
再び、何故だ?
アメリカが円安を許さないからである。
日本にとっては円安が望ましい、だけど大幅な円安はアメリカが許さない、ということでドル・円相場はしばしば日米の政治の駆け引きに翻弄されたことがある。
そして、日米共に納得するレベル、或いはレンジは往々にして変わった。
塾長が現役を退いた頃は、115~135円、その後我が国経済、そして株価が回復しだしたら105~125円に若干円高サイドにシフトし、2003~22004年には、未曾有の35兆円もの円売り介入が行われて、100円割れを阻止した。
今は、恐らく85~105円くらいだと思う。
塾長はドル・円が115~120円くらいで取引されている頃から、“ドル・円は102円に行くと思う。”と言っていたが、2008年になって、“ドル・円は92円に行くと思う。”と変更した。
それは円売り介入が出ないであろうことを察知したからである。
そして、今年の1月にとうとう87.10の安値を示現した。
さて、ちょっと長くなったが、そういう訳で決して我が国は円安一点張りを主張、志向している訳ではない。
そもそも、加工貿易を行っている輸出業者は、殆どの原材料を輸入に頼っているのではないか?
金属、プラスティック、ゴムなどの殆どを輸入して、技術を使って加工し、輸出している。
エネルギー資源の殆ども、輸入している。
余りピンと来ないかも知れないが、我が国の食料自給率は40%以下。 実に60%近くの食料を輸入している。
何だ、我が国は輸入立国ではないか?
そうであるなら、円高は決して悪くはないではないか?
円高のメリットとディメリットを、再検証してみよう。
円高のメリット。=円安のディメリット。
―輸入物価が安くなる。=将来のインフレ懸念を和らげる。我が国の購買力が増える。(ワインが安く買える。)
―低金利の維持がし易い。=財政赤字の金利負担が抑えられる。
―企業の構造改革が進む。=将来の競争力が強化される。
円高のディメリット。=円安のメリット。
―輸出企業の採算が改善する。=景気にプラス。国内の需給不均衡を外需で埋めることが出来る。
―外貨建て資産の評価が上がる。=本邦投資家のバランス・シートが改善される。
―日本の財が海外の投資家にとって買い易くなる。=デフレ圧力が減殺され、国内資産価値の上昇が見込まれる。
ちょっと、難しくなってきたが、要するに円高・円安共に、長所と短所があり、その最も居心地のいいレベルに収斂するように市場は通貨を売買しているのではなかろうか?
居心地のいいレベルとは、金融当局者、輸入業者、輸出業者、機関・個人投資家の立場によって、その温度差は違ってくる。
―金融当局者。=景気動向と海外からの政治的圧力を常に気にしなくてはならない。 行き過ぎた円高も、そして行き過ぎた円安も駄目!
―輸入業者。=そりゃあ、円高がいいに決まっている。
―輸出業者。=そりゃあ、円安がいいに決まっている。
―機関・個人投資家。=既に外貨資産を保有している投資家は円安を望み、これから外貨資産を買おうとしている投資家は円高を望む。 果たして、貴方はどちらかな?
おっとう、随分長くなってしまった。
塾長の個人的な意見は、
金融当局者は、恐らく現在はドル・円は85~105円のレンジが居心地がいいと感じ、輸入業者は2007年からの円高を嬉しく思い、輸出業者は多少の円高は仕方ないと思って、想定レートを1ドル=90円まで下げてきており、機関・個人投資家は上で言ったように、既に外貨建て資産を保有している人は円高過ぎると感じ、今から外貨建て資産を買おうとしている人はあと少し円高になって欲しいと感じている筈である。
最初は小学生にも分かる様な説明をする積りであったが、やっぱりグダグダ難しい話となってしまった。
smileさんのお嬢さん、分からない点があったら、ご質問下さいね?
久し振りにアカデミックな話をして、ちょっと得意な塾長。
- 2009年8月24日(月)14:57
- コメント(7)















コメント一覧
コメント7件円高、円安のメリット、デメリットの具体的な解説ありがとうございます。
ただ私の個人的な考えでは、依然不景気の円高より好景気での円安が国益に適っていると思います。
日本は資源の無い国です。
日本の持つ高度な技術から生まれる製品の殆どが車や電化製品といった景気に左右されやすい商品ですよね。
とりわけこういった商品は国際競争に晒されやすく、韓国、中国、台湾などを相手に価格競争が激しいですよね。最近は中国でも日本の技術を盗んでクオリティーが向上した製品を安く真似て生産していますよね。
また日本企業も海外で生産する事で現地の安い人件費で輸入しなくても済むように現地で現地の通貨(米ドル、ユーロetc.)で仕入れたりして工夫しているようですね。
なので日本に国力がある間は、円高であるより円安の方が日本企業にとってやはりメリットが多いと思えます。
しかし本当に怖いのは、国力衰退時の円安です。
いわゆる円の信用の失墜です。
今後どのレベル、期間まで円高に進めるのか?未来は解りませんが、十年十五年の長期スパンで考えたら、このままの国勢&国政では、今回が最後の円高局面で国力衰退による大規模な円安&インフレがやってくると一部エコノミストが警鐘を鳴らす意見にも頷けます。
まさに塾長の仰る国力のある「強い円」の実現は理想的ではありますが、(国際競争に晒される)現実的ではないように思えてしまうんですよね・・・
投稿者:yt|2009年8月24日 16:08
*日本は資源の無い国です*
上記に補足です。
資源の無い国日本ですが、リサイクルの技術や廃品から取れるリサイクル資源は相当で、現にスクラップ鉄などのリサイクル資源を新興国に輸出しているようです。
リサイクル率の向上は、資源の輸入軽減にも貢献すると思うので、やっぱり円安がイイ♪(笑)
投稿者:yt|2009年8月24日 16:23
国それぞれ居心地のよいレベルは何で決まるんでしょうね。
日本はどのレベルがいいんでしょう。
クロス円をみてるとまだまだ円安な気がしてならないのですが。
それだけドルが弱くなったということでしょうか。
投稿者:真逆|2009年8月24日 23:35
食料自給率ですが、60%の食材を輸入品でまかなっているわけではないそうです。
政府が発表する数値は「カロリーベース」というトリックで算出され、皆が思う自給率とは異なるんだそうで。
魚沼産米に地場野菜に国産豚肉、国産牛肉、国産鶏卵に北海道牛乳。
これらを毎日食べてても、50%超えられるかどうか。なんか変ですよね・・・。
あと自家栽培、自家消費は自給率換算に入らないとか。
自給率向上させる行動って難しいです。
あ、ワイン消費減は確実に自給率上昇に貢献かな?
投稿者:ふぉすたー|2009年8月26日 00:15
今朝のニュースで輸出がアジア向けで持ち直してるようですね。
しかしそれより興味深かったのが、依然円高であるのに輸入が減っているという事です。
やはり不景気での円高では消費が伸びないという事なのでしょうか・・・
投稿者:yt|2009年8月26日 12:06
ありがとうございました。パパといっしょに読みました。参考書に「私の使う参考書には違うことが書いてありました。資源にあまりめぐまれない日本では、海外から資源を輸入し加工し、海外に製品を輸出することによって、経済発展させてきました。このような貿易を加工貿易といいますが、近年はアジアの国々で工業化が進み、製品の輸入が増えて、加工貿易の形はくずれてきています。」書いてありました。
低金利の維持がし易い。企業の構造改革が進む。パパより酒匂さんがわかりやすいのでその意味を教えてください。
今日はがいためきっずで勉強しました。
快適な温度って有りますよね。当方は10℃~25℃が快適です。(春、秋が良いですね。)サンフランシスコ、サンディエゴなんかが理想的です。温度でなく居心地の良い為替でした。95円でふらふらするところを考えればプラス、マイナス10円なんでしょうか。温度と為替が異なるのは、為替は経済時勢によって変化するので弾力的に対応する柔軟さと常にアンテナを張っておかないと適温がわからなくなるんですよね。
投稿者:smileの娘&smile|2009年8月26日 22:31
smileさんのお嬢さん、
* 低金利の維持がし易い。企業の構造改革が進む。その意味を教えてください。*
日本は、国債を沢山発行して投資家の皆さんからお金を借りています。
当然、それに対して利息を払わなければなりませんが、その利息が低い方が国の負担は減りますよね。
円安になると資金の流入を促すために金利を高くする傾向がありますが、逆に円高になるとその必要が無い為に、低金利を放っておけます。
これは勿論、机の上の議論であって、実際の為替相場はそう簡単な動きはしません。
我が国は、戦後一貫して円高が進み、そのつど輸出業者は“これ以上の円高ではやっていけない!”と悲鳴を上げ続け、結局今は100円以下の一桁相場が、何となく定着しました。
その間、輸出業者は構造改革などの大変な努力をして“円高にも耐えられる体質”を自分達で築き上げました。
円高に耐えられない労働集約的な産業は、残念ながら衰退するか、海外の労働力の安い国々に移転することとなりましたが、日本の技術を駆使した、競争力のある産業は益々力を付けました。
これからは、為替相場に余り影響されない企業体質が重要だと思います。
投稿者:塾長|2009年9月 1日 16:13
コメントを書く