月曜コラム「週刊 独り言」 外為どっとコムFXブログ

件のオプション取引。

先週の為替相場は、年明け早々大荒れの展開となった。

オバマ新大統領の就任式当日の21日には、円は対ポンドで変動相場制以降最高値の119円台を記録し、対ユーロでも6年10ヶ月ぶりの112円台に入り、また対ドルでもあわや87円を切るか、というレベルまで急騰した。
正に、円の独歩高の観であった。
特にドル・円は、ニューヨーク時間21日の午前10時(日本時間の22日夜中の午前0時)を超えた途端に一挙に3円も下落し(円高)、数週間前から取り沙汰されていた大きなオプション取引がその原因であるとの噂が広がった。

塾長は、事の真相は知らない。
ここで余り詳しくオプションの解説をする積りは無いが、何が起きたかを推察してみよう。

マーケット・ソース(市場関係者)によると、
-ある大手の金融機関(A銀行としよう。)が、ドル・円相場が93円くらいの頃(12月の下旬か、1月の上旬?)、1月21日午前10時にExpire.(満期)の、ストライク・プライス90円のドル・プットのオプションを大量に購入した。
(易しく解説すると、A銀行が、1月21日午前10時に90円でドルを売る権利を有するオプションを購入した。)
この金融機関は、ドル・円相場が90円以下であれば、オプションを売却した金融機関(B銀行としよう。)に対して、その時の相場が何であろうと90円で売る権利を持っており、もし相場が90円以上であれば、その権利を放棄して市場の実勢相場で売ればいい。)

-期間が一ヶ月近くもあり、A銀行が支払ったプレミアム(オプションを購入した手数料。)はそんなに高額ではなかったろう。

これにより、ドル・円相場が90円より円安になれば、A銀行はプレミアムを払いっ放しでそれっきりになり、B銀行はそのプレミアムがそっくり、懐に入る計算である。

B銀行にとって、事はそう簡単には行かない。
ドル・円相場が90円より円高になれば、B銀行は無限の為替差損の危険性を抱えることとなる。
85円になっても、65円になってもB銀行はA銀行から約束した1ドル=90円でドルを買わなければならない。 だから、無限のリスクと言うのである。

ではB銀行はそのリスクを回避、或いは軽減する為にどうするか?
90円より円高になるケースを想定して、ドル売り&円買いの“デルタ・ヘッジ”を行う。
この“デルタ・ヘッジ”の比率は、相場の動きと満期日が近付くにつれて、非常に複雑に変化し、90円を下切ってしまえば、B銀行は、
-相場が下がれば下がるほど、より大量のドル売りをしなくてはならず、逆に相場が反転上昇しだすと、その売ったドルを買い戻さなくてはならない。

ご心配なく。 これは全て、コンピューターが計算して、“相場がこうなったら、これだけ売り増せ。 相場がこうなったら、これだけ買い戻せ。”と教えてくれる。

さて、相場の展開であるが、年初こそ“オバマ・ユーフォリア”の影響で94.64という“美味しいレベル”までドルが戻したが、その後は直ぐにユーフォリアが剥げて、あっと言う間に90円を割り込み、1週間も経たない内に88円台に突入した。

B銀行は“デルタ・ヘッジ”に奔走して、大量のドルを売った筈である。

逆にA銀行はほくそ笑み、“しめしめ!”と思った筈である。
で、このまままっしぐらに65円まで突っ走るか?

突っ走るかも知れないし、再び90円に戻すかも知れない。
どうするか?
89円から88.50まで、大量にドルを買うのである。
オプションの買い手は、相場がI.T.M.=In the money.(利益範囲に入る。)になると、実に簡単に利益を上げることが出来る。 だから、プレミアムを払って、リスクを取るのである。
取り敢えず、89.00~88.80で10億ドルを買うか? 
次に88.70~88.50で10億ドルを買うか?

そりゃあ、ドル・円相場は急激に戻しますよね。

A銀行は楽なもの。
1月21日までに相場が上がれば(ドル相場)、この20億ドルをインター・バンク市場でキャッシュで売ればいいし、買ったレベルより幾ら下がってもB銀行が90円で買ってくれる。

左団扇(ひだりうちわ)のA銀行に対して、オプションの売り手で無限のリスクを負うB銀行は大変!
相場が戻りだしたら、またデルタ・ヘッジを減らすために大量にドルを買い戻さなければならない。
そして、90円をぶち切れて、91.30までオーバー・シュートしてしまった。

A銀行は、安値で買ったドルを見事に売り戻して、大量の為替利益(数十億円?)を得た。

さて、件の1月21日午前10時頃(日本時間の真夜中)のドル・円相場であるが、塾長は翌日の検査を控えて“たんぱく質抜きの食事”をした後、早々と寝ていたので勿論相場展開を見てはいなかったが、90円近辺で小一時間ウロウロした後、10時ちょっと前に90.12-16の高値を付けて、10時を過ぎた途端に急にドルが下げ始めた。

あつと言う間に3円の急落!

この急落の原因として、件のオプション取引がこの急落をトリガーした(きっかけとなった。)ということであったが、どうも腑に落ちない。

普通であれば、A.T.M.=At the money.=(ストライク・プライス)に近い相場が小一時間も続けば、A銀行は“何もする事は無い。”し、例の下で買ったキャッシュのポジションで“もの凄く”儲かった筈であるから、言う事無し。

片やB銀行も、ちゃんとしたデルタ・ヘッジを行っていれば、損失も蒙らなかっただろうし、恐らくポジションも限り無くSquare.に近いものであったのではなかろうか?

要するに、オプションがらみの偏ったポジションが有ったとは考えられなく、結局は、
-疑心暗鬼のマーケットが、ちょっとした売りに驚いて、パニックがパニックを呼んで、ストップ・ロスの嵐が吹きまくった。
-よく考えたら、どうもおかしい。 誰がドルを売ったのだ?と皆が、首を傾げだした。
-これはいかん! 早く買い戻さなくては。

それで一挙に89円台のミドルまで戻して引けたのであろう。

ご苦労様!


最初に言ったように、これは塾長の推測でしかない。
ただ、最近よく、“オプションがらみの売りが出て、云々。 オプションがらみの買いが出て、云々。”と言う話題が出て来て、甚だ面白くない。

何が起きたのか分からない時は、“オプション云々…..”、で話をまとめられたんでは適いませんなあ。


それでであるが、規模が件のオプションのように巨額かどうかは知らないが、まだ似たようなオプションがある。

第一回目は、ストライク・プライスが90円。 これは終わった。 大騒動となった。

これ以降は、勿論ストライク・プライスがもっと下。

ここ一ヶ月のPrice action.=(値動き)である、92.00-87.11(下げ)-94.64(上げ)-87.10(下げ)-88.80(上げ).が気になります。

皆さんは、塾長が口を酸っぱくして言い続けているように、兎に角ストップ・ロスのオーダーをちゃんと置いておいて、“損切りする時は小さく。”して、“利益を上げる時は大きく狙う。”ように努力致しましょう。


        相場は結構動いているが、割合泰然としている塾長。
 

コメント一覧

コメント9件

こんなに丁寧な解説ははじめてです。感動しました。流石!塾長です。

質問です。
デルタ・ヘッジの説明をして頂けると助かります。(えへへ。)

今回は同じ銀行内で買い支え行使時間が終わったら売りまくったという話もありまが… 相場も色々取引も色々。

わからない話はオプションの売り(買い)ヘッジファンドの売り(買い)で片付けるのが簡単かもしれないがそれで全ての相場の動きの説明が付く訳でもないと思います。毎日、小さなオプションは山ほどあります。今日は3ヶ月ものVS2週間もの…これで説明できれば塾長のブログもオプションの情報だけ書けばいいですもんね。でも、暫くは大きなオプションには注意かもしれませんね。

投稿者:smile|2009年1月26日  10:21

塾長

本当に、丁寧な説明をありがとうございます。

オプションの影響があった「らしい」という思わせぶりなコメントを読むたび、におわせるだけじゃなくて、全部言って~と、私にもわかる説明を求めていたところです。

オプションだけで説明はできないという結論でも、一応、その理屈は分かっていたかった!

FXをやっているんだから、オプションのこともある程度は分からないと、と本を読んでも、なかなか感覚的にわからない!(とほほ)今度、東証のセミナーを聞きに行こうかなと思っています。

みお

投稿者:みお|2009年1月26日  12:12

 塾長のご解説、非常に興味深く拝読させていただきました。
 私は、普段、通貨オプションをOTCで取引しておりますが、今回の90円を挟んだSQ合戦も、ボラティリティの変動要因として注視していました。FXや現物のみのポジションであれば、上下動に心労が絶えませんが、オプションの場合は、軍資金さえ潤沢であれば、ヘッジでもスペキュレーションでもリスクコントロールしやすいので重宝しております。オプションはそのとっつきにくさからか、あまり普及していないのが惜しまれるところですが、素人が安易にアウトライトポジションを取るより、よほど安全な投機手法だと思っています。
 今後とも楽しい解説をお願いいたします。

投稿者:ふぁるこん旦那|2009年1月26日  12:58

塾長 様

オプションの講義ありがとうございました。
大変参考になりました。
私もsmileさんと同様で「デルタ・ヘッジ」が分かりません。どうぞ追加講義をお願いします。


>“損切りする時は小さく。”して、“利益を上げる時は大きく狙う。

これも肝に銘じております。
必ずトレンド変化前の5分足でストップを入れおります。
惜しくなってストップを取り下げるような馬鹿なことはしません。地獄への一丁目ですから。^^

今日は朝から円安方向ですね月曜日でドル買い優勢なんでしょうか?
午後になってボリンジャバンドの向きが変わってきたので欧州時間が楽しみだぁ~


投稿者:EVOLUTION|2009年1月26日  14:19

>これは全て、コンピューターが計算して、“相場がこうなったら、これだけ売り増せ。 相場がこうなったら、これだけ買い戻せ。”と教えてくれる。

 テクニカルトレーダーとしては、是非ロジックを覗いてみたいです。

 Meta Trader4でなら簡単なシステムは組めますが、複雑なシステムになると自分の能力では全く何もできません。今からC言語を勉強してもいいのですが、なんだかシステムの構築にのめりこんで”おぉ、エラーが無く、うまくプログラムが作動したぞ!”と感動して結果は二の次でそれだけで終わってしまいそうです。

投稿者:JamesBond|2009年1月26日  15:09

EVOLUTION様、
電気工学部出身ですから難解な数式も読めると思います。【外国為替のオプション D.F.デローザ著 推薦します。教科書としてはOptions,Futures, and other Derivatives John G. Hullなんかもいいかもしれません。】専門書ですので取引には全く役に立ちません。この本ではオプションのイメージを持つことすら出来ませんがギリシャ文字が好きな方はどうぞ。
===
塾長の解説の方がわかりやすくすぐに取引に役立ちます。難しい数式なんか取引には必要ありません。勘の方がよっぽど大事です。
===

デルタとは、為替の先物に対しオプションのプレミアム*がどれぐらい動いたかの値です。為替の先物が10円動きオプションのプレミアムが5円動けばデルタは0.5となります。例えばデルタが0.5のとき、先物1枚に対してオプション2枚で均衡に達しますのでコールの売り2枚に対して先物を1枚買えばヘッジできます。このヘッジをデルタ・ヘッジと言います。塾長の説明にあるようにこのデルタヘッジの値は日々異なります。

*オプションのプレミアム
例えば、ドル円の市場価格が100円のとき、行使価格90円のコールオプションを購入し行使すると現在の価値は100-90=10円となります。ドル円が100円のとき行使価格90円のコールオプションを購入し満期日までに110円まで円安になれば110円-90円=20円の利益となり将来の価値は110-100=10円となります。

オプションの価値=現時点での価値+将来の価値 

将来的価値の部分がA.T.M.(アット・ザ・マネー),I.T.M(イン・ザ・マネー),O.T.M(アウト・ザ・マネー)の話になります。

やはり、塾長
HELP ME!

投稿者:smile|2009年1月26日  21:53

塾長、どうもありがとうございました。
市場では個人には想像もつかない資金が動いているのですね。
それが数円を一気に動かすのかあ・・・
巻き込まれたら個人はどうしようもありませんね。

荒れた相場ではストップをしっかりおくよう私も守っています。
でも、読みはいいのに、上下動が激しいので
あれよというまにストップに引っ掛かり薄利。
そのご急上昇で大魚を逃しています。
メダカでも取れないよりはましなのですが、どうもスッキリしません。
みなさんずっとPCに張り付いているわけでもなさそうなのに反転のサインはどうして見逃さないのでしょう?
まだまだ初心者には勉強が足りません。

投稿者:なみこ|2009年1月26日  23:27

GスタTVで言われていた介入の件ですが、介入がおこなわれると どうなるのでしょう?
大きく値動きが出るようですが 短時間に終わるような ことなのでしょうか?
過去にも介入はあったようですが、知らぬが仏で わかりません。
具体的にどのような値動きになるかおしえてください。

投稿者:hiropu|2009年1月29日  05:18

塾長様、アドバイスをいただれば幸いです。
米ドル70円割れというのは現実味があるそうな気がしています。私は、今60円台で買ったNZドルのポジションを4万ほど持っています。維持率も100%を切っています。で、暴落への備えをしないといけないんですが、塾長の教えのように、損切りが一番手堅いのかとは思います。しかし手遅れというか、今それをやればかなりの損を出します。そこで、私は今、米ドル、豪ドルを合わせて4万通貨ほどショートで持っていますが、防衛策として如何でしょう?
アドバイスをお願いします。

投稿者:ひろたん|2009年1月31日  12:13

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