先週木曜日の日経新聞の朝刊の一面に、デカデカと“ドル防衛 秘密合意”の文字が躍った。
記事の内容は、
“3月の金融危機の時に米国、欧州、日本の通貨当局がドル買い介入を柱とするドル防衛策で秘密合意し、ドル暴落で世界経済に大きな混乱が広がるのを回避しようとした。
同時に為替市場の安定に向けた緊急共同声明も検討された。”というものであった。
成る程。
確かにあの時、バーナンキFRB議長が介入を示唆し、ポールソン財務長官が介入の正当性を説き、ブッシュ大統領が強いドルを望むと、中央銀行・行政・政府の三者揃い踏みでドルの擁護に乗り出したので、“こりゃあ、アメリカも相当な覚悟だな?”と思ったが、ドル防衛の秘密合意があったのか?
ドル・ベアの塾長は、これら揃い踏み発言に極めて冷静に反応した。
-バーナンキ発言。
FRBは財務省の指示に従って介入の執行を行うだけで、“介入する、しない。”は、FRBの管轄外。これは、我が国の財務省と日銀の関係と同じである。
-ポールソン発言。
あんた、何を言ってんだよ!
我が国には昨年来、“円売りの実弾介入はおろか、口先での介入もまかりならん。そもそも、相場は市場が決めるもの。”と素っ気無く言い放ち、貿易赤字の最大相手国である中国に対して、執拗に人民元の切り上げ=ドルの切り下げを求めて来ながら、自らの問題であるサブ・プライム・ローン問題でドルが売られ、そしてインフレ懸念が台頭してくると、“これ以上ドルが下がったら困る。”だと? 余りにも身勝手過ぎないか?
-ブッシュ大統領。
レーム・ダックのブッシュ大統領にとって、ドルの相場なんて、全く興味の無いこと。双子の赤字をFinance.=(資金調達して赤字を埋める。)する為には、“強いドルはアメリカの国益に叶う。”と未来永劫言い続ける必要があるのである。
市場は、ドル防衛の秘密意合意があったかどうかは知らなかった筈であるが、少なくともドル買いで反応した。
そして、ドルは3月のレベルから相当値を戻した。
そもそも、何故今頃日経新聞にこの秘密合意のニュースがリークされたかは知らないが、市場の反応は極めて落ち着いている。
ドル・円相場もどちらかと言うと、ドル安・円高気味で推移している。
実は、このニュースによると、
“介入を決断するにあたって特定の防衛ラインは設定せず、投売りが膨らんでドル暴落の恐れが強いと判断すれば機動的にドルを買い支える案を軸に検討した。”とある。
言い換えれば、ユーロ・ドルの1.60とか、ドル・円の95円を意識したものではなく、“あのまま、あのピッチでドルが急落したら協調介入も辞さない。”という程度のものであったと思う。
実は塾長があるソースから聞いた話は、“ドルがあと10%も急落したら、介入が出るかも知れないよ。”というものであった。
具体的には、ユーロ・ドルが1.60×110%=1.76で、ドル・円が96×90%=86.40で、このバリバリのドル・ベアの塾長だって、“そりゃあ、85円に近付けば介入が出るかも知れないな。”と思った。
先程も言ったが、この報道の後の市場の冷静な反応が総てを語っているのではなかろうか?
-再び、ドルが急落すようなことがあれば、日米欧が協調介入する可能性が大である。
-但し、特定の防衛ラインは存在せず、ユーロ・ドルが1.70、そしてドル・円が90円を切るようなドル安にならない限り、協調介入の可能性は低い。
-協調介入に関して、日・欧主導で米国を説得して合意に至った、という観測があるが事実は違うであろう。
泣きを入れてきた米国に対して、日欧は“ちょっと、身勝手なんじゃあないの?”と多少の不快感は示したと思う。
結果として、ドルは事無きを得た。
Good for US Dollar !
でも、このままでは終わりませんぞ!
日々のブログでも何回か指摘したが、ドルの回復により、当然その他通貨が下落した。
そのとばっちりを受けたのが、円・クロスである。
特に、7月のニュージーランド中央銀行の利下げに端を発した円高はきつい。
一番身近なドル・円相場が殆ど動かないと言うか、むしろ円安気味に推移していたので、クロス・ベースでの円高が余りピント来なかった。
あっと気が付くと、ここ一月の間に殆どの主要通貨に対して5~6%以上も円高になり、対豪ドルでは10%に近いではないか!
日銀のレビューによると、昨年に比べて多少は減っているとはいうものの、外為保証金取引の平均レバレッジは、5.7倍だそうである。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j07.htm
(これは、大変興味のあるレビューである。是非、皆さんもご一読されることをお薦めする。)
恐らく、スワップ・ポイント狙いの高金利通貨のロング=(円のショート)のレバレッジ率は、この平均5.7倍よりも高い筈である。
まあ8倍として、Kiwiが5%円高になったということは、乱暴な計算で5%×8倍=40%。
豪ドルが10%円高になったということは、10%×8倍=80%。
そんなにレバレッジを掛けていない?
それは、結構。
ここでも何回も言ったが、スワップ・ポイント狙いの円ショート・ポジションに大きなレバレッジを掛けてはいけない。
通貨の短期的なVolatility.=(変動)に負けることがある。
ここぞ、という時に、ド・ドーンと掛けるのが正解だと思う。
さて、これからクロス・ベースでの円高は続くのか?
その場合、ドル・円相場はどうなるのか?
パズルは益々複雑・難解になるばかりである。
大好きな夏も終わり、ちょいと寂しい感じの塾長。
コメント一覧コメント3件
塾長様
こんにちは!
人民元の切り上げをしたらどういうことになるのですか?
投稿者:ライオン丸の子|2008年9月 1日 17:23
ライオン丸の子さん、
人民元は、ドルとペッグしていますから、人民元切り上げ=ドルの切り下げです。
もう無茶苦茶ですよね。
塾長の大好きな言葉。
“Give me a break !!”=(ええ加減にせーや!!)
本当は、a と breakの間にもう一つ乱暴な言葉が入るのですが、ここでは言えません。
投稿者:塾長|2008年9月 3日 15:29
この クロス円のパズル とっても難しいのですが・・・
どうにか読み解く方法ってないものでしょうか?
いや あったら みんな使ってると思うんですが・・・・
投稿者:Acura|2008年9月 8日 15:19
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