ある種の勘
- 2006年1月 3日(火)16:58
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皆様、明けましておめでとう御座います。本年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
今日は、1月3日。
お正月三が日の最終日で、殆どの皆さんは、まだ炬燵に入り(そうか、最近は炬燵が有る家など無いか。)、お屠蘇を飲み、まだゆっくりされていることであろう。
ところがどっこい、外国為替市場は開いており、現に2006年最初の日の今日も、円高が若干進み117円台前半の取引となっている。
さあ、今年の相場はどう動くか?塾長は、相変わらずの円高派。市場の焦点が2005年のメーンテーマであった"金利差"から、実体経済に目が向き、大きくドルが売られて円高が進むと思っている。今年も余り細かい動きに囚われず(細かい動きのレポートはゴマンと有りますもんね。)、大局的な相場観をお伝えして行きたいと望んでおります。
さて、塾長は現役を離れて早や4年が経ち、実際にバタバタディーリングをすることはなくなったが、色々思い出すことがある。
不思議なことに、余り大きく儲けた記憶は少なく、損したことばかり思い出すが、それ以外にも"我ながら、凄かったなあ!"と思い出すイベントが2件有る。2件とも為替介入についてである。我々ディーラーは、介入については口外しないとの不文律が有るが、まあもう時効であろう。お許しを頂くとしよう。
以前、拙著"酒匂隆雄の為替塾"にも書いたので重複になるが、先ず第1回目は皆さんよくご存知の、"プラザ合意"である。時は1985年9月22日、日曜日。いつものように日本経済新聞の朝刊を読んでいたら、何面かに(一面ではない。)、"ニューヨークのプラザホテルにおいて、先進国蔵相、中央銀行総裁が集まって、為替相場についての討議をした模様。"という小さな記事を見付けた。その頃、G7はおろかG5、いや先進国が一挙に集まって、協調して何かをやろう、などという気運は全く無かった。"これ、何だろう?"と訝った。そして、"何かおかしいぞ!"とピンと来た。
翌日、9月23日は月曜日であったが、国民の祭日である秋分の日。誰にも相談せず(だって自分でも何が起きつつあるのか全く不明であったから。)、朝8時からディーリング・ルームに出掛けた。恐る恐る、日銀とのホットライン(為替介入をする時に使う直通の電話線)を押してみると、聴き慣れた声がした。
"あれ、酒匂さん、どうしたの?"
"え、いや、昨日の新聞を読んで、何だか変な気がして出て来てみた。何か有るんですか?"
"待機していて下さい。ドル売り介入を行って頂きます。"
そして、大量のドルを売った。
確か、レベルは240円より少し上であったが、全然ドルが下がらない。その内、シドニーや、香港、そしてシンガポールのディーラー仲間から、
"What the hell are you doing?"="一体全体、お前何をやっているんだ?"
"介入だよ、介入。日銀の代わりにドルを大量に売ってんだよ。ドルは下がるぞ!"
当日、ドルは全然下がるどころか、3円くらい上がってしまい、多額の損失を被った。
当時、協調介入など存在せず、市場に完璧に無視されたのである。疲れだけが残った。ただし、このドル売り介入は、ヨーロッパ時間、ニューヨーク時間と継続して行われ、結局中央銀行に向かってドル買いを行った投機筋は手ひどい目に合ったのである。そして、塾長もその晩には損を一挙に取り戻して、翌日からは大儲けをしたのである。この後、G5、協調介入などが認識され始め、今日に至る。
そして、2回目。これは1990年1月2日の晩のこと。
午後11時のNHKニュースを見ていたら、"欧州市場で円安が進んでいる。1ドル=145円を超えている。"と放送していた。ご存知のように、世界の為替市場がお休みなのはクリスマスと、正月元旦だけで、海外では新年は1月2日から取引が始まる。
何となく、"あ、これは明日(日本ではまだお休み中の1月3日)介入するな!"とピンと来た。自信は、五分五分であった。
1月3日、今回も午前8時にディーリングルームに一人で行った。そして、ホットラインを押した。課長が直接電話に出て来た。
"明けましておめでとう御座います。"
"あ、明けましておめでとう御座います。酒匂さん、どうしたんですか、正月早々から。"
"え、いや、昨日NHKのニュースを見ていたら、新年早々円安が進んでいるので、円買い介入をされるのではないかと思って、お手伝いに来たのです。"
"えっ、本当ですか!是非、お願いします。"
今回も、ドルを売った。
プラザの時ほど大量に売る必要は無かった。市場が、"休日に日銀が介入をする。"ことが尋常ではないことを知っており、直ぐにドル売り介入に同調してきたのである。それでも、断続的に午後6時まで介入をした。暖房も無し、食い物も無し、勿論お神酒(お酒のこと)も無し、で随分辛かった。その後数ヶ月経って、あるパーティーの席で日銀総裁とお会いした時、
"正月の介入の件、お聞きしていますよ。ご苦労様でした。"
と言われた時は、涙が出るほど嬉しかった。ディーラー冥利に尽きると思った。
恐らく、日銀が祭日に為替介入をしたのは、後にも先にもこの2回だけだと思う。その2回ともにお役に立ったことは本当に嬉しい。そして、もっと嬉しいのはこの2回とも、全く自分の勘で、"介入が出るのではないだろうか?"と思って、自主的に行動したら本当にそうなったことである。塾長は、こういった勘を大事にする。
勿論、勘だけではディーリングは出来ない。でも、いくら考えてもどうしても決断が下せない時が有りませんか?そんな時は、勘を働かせなさい。そして、その勘が外れたらすぱっと腐れポジションをお切りなさい。そして、次にキラリと勘が働くまでお待ちなさい。
正月早々、占い師のような訳の分からないことを申しましたが、今年の相場もそうすんなりと行く筈もありません。世の中にアンテナを張り巡らし、切磋琢磨し、勘を磨き、自己規律を守って頑張って参りましょう。今年も、巧く行きます!
さて、明日1月4日(水)午前9時からテレビ東京で放映される、"オープニング・ベル"に、マット・今井さんと出演致します。
ご存知のように今井さんは、円安派。塾長は勿論、円高派。丁々発止の議論をご期待下さい。
新年からやる気満々の塾長。
- 2006年1月 3日(火)16:58
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