6月23日放送分
背中から回した手は振り落とされないようにしっかりと握り締められていた。昼間の賑わいがまるで蜃気楼のように、今ではひっそりと静まりかえった暗闇の中を私をおぶって走る母。
時々現われるお城の中に入れてもらえず、見たことの無い老婆に哀願しているところで目を覚めた。お城の夢を見るときは体調の良くない時だと経験則が教えてくれていた。熱を測ると案の定39度を越す高熱。母は近所の主治医にすぐに電話をし、私をおぶさり夜の静寂の中に飛び出していったのだ。
その時の母の背中は今でも鮮明に覚えている。あの小さな母の体のどこにこんなエネルギーがあるのだろうか。150センチ近い私の体をおぶって1キロ近くを走っていた。母は強い、そして優しい。
何年か前に野口英世記念館を訪れたことがある。そこには館内を回る私の足を立ち止まらせた1通の手紙がある。それは母から息子、野口英世に宛てた手紙である。野口英世は医者になった後、一時期、放蕩な暮らしをしていたのだが、その息子の目を覚まさせたのが母からの手紙だっただ。偉人の影に母あり、母の慈愛というものは言葉では言い尽くせない、広くそして深いものがある。
さて、今回のゲストは「かりゆし58」という沖縄のロックバンドのリーダー、前川真悟さんをお迎えして、いろいろなお話を伺った。
彼は高校卒業後に沖縄を離れることになった。彼の言葉を借りると「落ちるところまで落ちてしまった」という。でも、彼の心の中には、常に母親への思いがあった。沖縄に戻り、音楽で再起をかけ「アンマー」(お母さんという意味だ)というシングルを発売した。彼は、そのCDを直接母親に渡せず、机の上にそっと置くだけしかできなかった。それから、しばらくして、彼が母親の車を車検に出すために運転したところ、流れてきたのは。リピートがかかりエンドレスに演奏された「アンマー」だった。お母さん、ありがとう…
2008年6月30日(月)16:53