FXブログ 今晶の「THE・為替記者!」


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IMF、サブプライム分析に甘さ

国際通貨基金(IMF)は8日発表した年次の世界の金融安定性報告で、米国のサブプライム(返済能力の低い個人)向け住宅ローン市場の混迷に伴う3月時点での損失額が9450億ドル程度(約97兆円)に達した公算があるとの試算を明らかにした。2007年9月時点での予測数値は最大で2000億ドル。IMFはリスクを判断するうえで甘さがあったことを率直に認めている。
 リポートは11日開幕する7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議での議論の「たたき台」になる。予想の上振れは住宅価格の下落に歯止めがかからなかったうえ、評価対象を商業用の不動産担保の融資関連にまで拡大したため。損失見込み額は住宅ローン絡みだけで約5650億ドルにのぼるという。
 今回の算出額は1990年代の日本の金融システム危機時に匹敵するもので、一段の混乱に備えるべきとの見解が示された。また銀行・証券会社などの資本不足の解消や公的支援の必要性についての記述もある。
 IMFは2007年4月の段階では、他の大部分の民間金融機関や投資家と同様、サブプライム問題の影響は限られるとの立場だった。しかし、ここに至っては「さまざまな参加者が手掛けた借り入れベースの資産積み増し(レバレッジ)の規模やパニック的な持ち高整理の可能性を組織全体で見誤った」と結論付けざるを得なかった。
 市場では「試算は試算に過ぎない」、「07年後半以降のマネー収縮の異常さを考慮すれば誤差発生は当然」との意見も出ている。ただIMF統計の存在感は大きいだけに「認識が甘かった」では済まされない面もある。猛省を促す声は多い。
 最近は英国など昨年後半に政策対応を抑え気味だった国でも手数が増加している。信用収縮へのスタンスの変遷はIMF調査部門に似た構図だろう。こうしたムードがG7会議などの場で一層高まり、声明が市場の不安沈静化につながれば昨年のような激しい動揺は起こりづらい。資産担保証券(ABS)取引などで痛めつけられた関係者の「リハビリテーション」にもプラスに作用するはずだ。(GI 今 晶)

2008年4月10日(木)13:18 個別ページ

米政府「監督強化」に賛否両論

米財務省は3月31日、金融市場の安定確保を目的とした監督改革案を発表した。サブプライム(信用力の低い個人)向け住宅ローン関連の混乱への対応が十分ではなかったとの反省に基づく。米議会でも改革検討の必要性は強く認識しており、政府提案をベースに関連法規の成立を急ぐことになりそうだ。
 最大の焦点は中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)の権限をどこまで拡大するかだ。財務省案では証券会社やヘッジファンドといった多様な市場参加者に幅広く情報提供を求められるほか、企業や金融機関向けの規則設定で主導的役割を担い、他の監督当局と協力する権利も得る。「安全網」を複数設置することで政策が後手に回ることを防ぐ狙いがある。
 このほか、連邦、州政府当局との間の役割分担についても明確にする方針だ。ポールソン財務長官によると施策完了までには数年を要する見通し。
 米議会では民主党の有力議員などから対応の遅れを批判されながらも一定の評価を受けている。
 問題は規制強化の「副作用」。FRBの守備範囲は既に3月、証券会社中心のプライマリー・ディーラー(米政府公認ディーラー)対象の米国債貸し出し制度を導入したことで事実上広がっており、今回の事態そのものに違和感はない。ただ証券業界などには「規制のみならず業界再編にもお上の意向が反映されるようだと活動の『萎縮(いしゅく)』と収益力低下につながりかねない」といった懸念が残る。
 ある大手外銀のエコノミストは「個人的な意見」と前置きしたうえで「政治サイドの動きは事実上、仕組みが比較的複雑な高リスク証券などを市場から締め出すもので、大手銀、証券各社の稼ぎ頭を奪うことにもなる」と指摘。長い目で見ると米国勢の地盤沈下は避けられないと読む。現実となれば実体経済が不安定な局面もすぐには終わりそうにない。
 安定志向と成長とはトレードオフの関係にあるということだ。(GI 今 晶)

2008年4月 1日(火)11:10 個別ページ

ベアー救済、「スーパーSIV」の残像

 米証券大手ベアー・スターンズの救済は今週、新たな局面を迎えた。既に買収に名乗りを上げていた米大手銀JPモルガン・チェースが軸になり、ベアーが所有する多額の不良資産を管理するための別会社を設立。ニューヨーク(NY)連銀が資金面で支援する。この枠組みは関係者の顔ぶれこそ異なるものの、昨年頓挫(とんざ)した債権買い取り目的の特別法人スーパーSIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)に近い。
 NY連銀が24日発表したところでは、新会社はJPモルガンが10億ドル出資。移管される約300億ドル(3兆円程度)相当の住宅ローン関連証券の購入に不足する分は公定歩合(27日時点で2.50%)での融資を受けられる。16日実施の緊急の公定歩合引き下げや18日決まった追加利下げが効果的に作用する仕組みだ。
 貸し出しが焦げ付く事態になればNY連銀の負担になる。
 また、買い取り対象は現時点で流通市場での取引が成立していない証券が中心。評価額はベアーが14日時点でのデータを基に算出したもので理論上の数値に過ぎないうえ、信用収縮が続いていることから売却を急いだ場合には損失が膨らみかねない。計画では10年の長い時間をかけてじっくりと処理する。さらにJPモルガンは年7.25%もの配当を得られ、何もしなくても10年で出資部分の5割は回収可能だ。金融機関への不安払しょくには一定の効果があろう。
 問題は「第二のベアー」が登場したさいに同様のスキームが適用されるかだ。今回のJPモルガンはベアーとの業務の補完関係が成り立ち、理想的な組み合わせだった。次も都合よく事が運ぶとは限らない。
 また、米金融当局が「お墨付き」を与えることで市場参加者のモラルハザード(倫理観の欠如)が進み、財務内容の改善が不十分なまま終わるリスクもある。衝撃へのもろさを残した状態だ。マネー収縮がより深刻になる可能性も消えてはいない。
 前門の虎、後門の狼——。ある欧州系証券のエコノミストは米連邦準備理事会(FRB)が置かれた状況をこう表現する。事態収拾に一歩一歩近付いているとは見られるものの、今後の展開は依然、予断を許さない。(GI 今 晶)

2008年3月27日(木)15:34 個別ページ

英中銀、「後手」回避にどう動く

 英国、ユーロ圏ではこのところ金融当局の周辺が騒がしい。米信用市場の動揺拡大の余波が英欧の大手金融機関にも及びかねないとの懸念が強まっているためだ。とりわけ英中銀イングランド銀行(BOE)は対策が後手に回ったとの批判を浴びつつあり、信認を保てるか否かの正念場を迎えた。
 BOEは前週20日、複数の民間銀行幹部と意見交換の場を設けたことを明らかにした。内容については「定例の集まりで現在の市場情勢について議論した」などとするのみで具体的には公表しなかったが、市場では「英株式市場などで19日、ある大手銀に経営危機説が流れたことを受けて緊急に対応策を協議した」といった解釈が多い。
 英BBC放送などがその後報じたところでは、出席者は資金供給オペの担保として住宅ローン関連の証券などを利用可能な枠組みづくりを求め、キング総裁も理解を示したという。
 BOEは他の中央銀行とも市場安定化に向けた話し合いを継続しているもようだ。21日付英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は米英、ユーロ圏中銀が不動産担保証券(MBS)の買い取りを検討しているなどと報道。米英はさっそく否定コメントを発表したものの、BOE報道官は「詳細に言及するには時期尚早だが、他の多くの選択肢を模索していることは確か」とも語った。次の一手に含みを残した格好だ。
 また、英追加利下げの時期が早まるとの観測が浮上している。19日発表された5—6日分の英金融政策委員会(MPC)議事要旨によると、この会合では賛成7・反対2の賛成多数で政策の現状維持が決まった。反対票を投じたのはギーブ副総裁とブランチフラワー委員で、いずれも0.25%の緩和策実施を主張。ギーブ氏は景気の楽観論にくみすることが比較的多く、その「宗旨替え」は金利引き下げの予兆になり得る。
 昨年は11月会合でギーブ、ブランチフラワー両氏が利下げ派として反対に回り、翌12月に政策金利は0.25%引き下げられた。
 波乱要因とすれば引き続き物価動向。ただ原油や貴金属価格は前週、投機マネーの一部の戦線縮小で大幅に調整した。信用不安の劇的な改善が見込みづらい現状では戻りも鈍そうだ。MPCメンバーの心理的抵抗も薄れた公算が大きい。
〔GI 今 晶〕

2008年3月26日(水)11:47 個別ページ

英ポンド、ドル安に再び乗り遅れ

外国為替市場では米株価とドルの下値不安がくすぶる中、ドル売りの受け皿に再び濃淡が生じている。「第二の基軸通貨」のユーロ、株安抵抗力が強いとみなされている円やスイスフランの人気が高い一方、英ポンドは英ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に懸念材料を抱えるだけに出遅れ感が濃い。
 ポンドの対米ドル相場は14日の日欧市場で一時、2007年12月中旬以来となる1ポンド=2.04ドル台への上昇をうかがった後、ドル安の追い風に乗り切れないまま失速。17日にはユーロが調整した影響もあって2ドルをあっさり割り込んだ。米サブプライム(信用力の低い個人)向け住宅ローン問題が証券大手ベアー・スターンズの経営危機と米金融当局の資金支援、大手銀JPモルガン・チェースによる救済合併という「非常事態」にまで発展したことでドル売り一辺倒のムードが薄れたためだ。英国は住宅セクターの混乱が継続しており、「豪州のドルなどリスクマネーの流出に弱い通貨とともに敬遠された」(外国証券の外為ディーラー)という。
 英政策金利は18日時点で5.25%と主要国中で最高水準とはいえ、米国が過去半年で2.25%の利下げを迫られたように「一寸先は闇」。しかも英金融機関は米国勢と同様、サブプライムローンの証券化商品の組成やSIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)と呼ばれるリスク軽視の投資事業形態に深くかかわっていたケースが少なくない。「第二のベアー」が米国内からのみ登場するとは限らないというわけだ。
 英中銀イングランド銀行は17日、緊急に50億ポンドの資金供給を実施。「予防線」を張った。
 また、各国政府・中央銀行の外貨準備の運用対象としてもポンドはユーロなどに遅れをとっている。
 国際通貨基金(IMF)が四半期ごとにまとめる各国外貨準備の通貨構成データ(COFER)によると、07年9月末時点での外貨準備額(速報ベース)は米ドル換算の総額で6兆371億4200万ドル。6月末の改定値(5兆7198億1900万ドル)比で3000億ドル以上増え、通貨別比率では、実態が明らかになっている分だけで算出すると米ドルが約63.7%、ユーロが約26.4%と6月の64.9%、25.4%から格差がやや縮まった。半面、ポンドは07年9月末時点で約4.7%と6月末の4.6%からの上昇幅は小さい。円が低金利にもかかわらず健闘したのとは対照的だ。
 ポンド建て資産に腰の据わった資金が回帰するまでにはまだ時間がかかりそうだ。〔GI 今 晶〕

2008年3月18日(火)12:46 個別ページ

英ポンド、「ドル安」の陰に潜むリスク

外国為替市場では前週後半以降、英ポンドもドル安の波に乗る場面が目立つ。3月の米追加利下げが確実視される中、5—6日の英金融政策イベントを無風で通過したことで金利面でのポンドの優位性に注目が集まったためだ。一方、英ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の先行き懸念が消えたわけではない。
 ポンドの対ドル相場は6日、英中銀イングランド銀行(BOE)が政策金利の据え置きを決めたと発表した直後に急伸。今年初めて1ポンド=2ドル台に乗せ、13日には2.02ドル台後半まで買われて2007年12月中旬以来の高値水準を付けた。7日発表の2月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が2カ月連続で減少するなど「敵失」があったとはいえ、1—2月のポンド低迷期に比べると上昇方向への値動きは軽い。「出遅れムードが濃かったゆえに選好度が高まった」(外国銀行の外為ディーラー)という。
 しかし、英国のアキレスけんである住宅セクターと信用問題は依然、解決のメドがたっていない。英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)が11日公表した2月までの直近3カ月の住宅価格指数はマイナス64.1と前回2007年11月—08年1月改定値のマイナス54.8から10ポイント近く悪化。1990年前半以来の記録的低水準になった。在庫の増加傾向も継続している。
 90年前半は英景気後退の足音が聞こえていた時期。2007—08年は米サブプライム(信用力の低い個人)向け住宅ローン市場の機能不全という未知の波乱要因を抱えている分だけ当時に比べると事態は深刻かもしれない。消費鈍化への波及リスクもより強く意識される。
 BOEは現在、景気への配慮姿勢をおおむね保っていると見られるが、その割にはコメントを控え気味。6日にも特に声明は発表しなかった。原油主導のインフレ圧力が残存する中では積極緩和策には傾きづらいからだ。物価や労働統計が実体経済の変化に遅行しやすいとされる点も悩ましい。とはいえ、最終的に大幅な金利引き下げに追い込まれた米国の例もある。判断の先送りが吉と出るか凶と出るかはまさに紙一重といえる。(GI 今 晶)

2008年3月13日(木)12:45 個別ページ

中国政府、荒波対応「暗中模索」

中国では経済政策の難易度が高まってきた。物価上昇への対処に微妙なさじ加減が求められるうえ、米景気など外部環境の悪化が進んでいるためだ。
 中国の温家宝首相は5日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)初日の政府活動報告で「国内外の経済情勢に不確定要素が相当多い」と指摘。2008年の成長率目標を8%程度と昨年並みの水準に設定したうえで「新問題に機動的な対策をとることで経済の振幅拡大を防ぐ」との考えを明らかにした。温氏が景気減速とこれに配慮した政策対応の可能性に言及したのは初めてと見られている。政府活動報告は施政方針演説にあたる。
 中国内では消費者物価指数(CPI)が依然、強含み傾向。2月にかけての大雪や足元の原油高など要因には事欠かない。今回の全人代でも、政府要人からインフレを警戒する趣旨の発言が相次いだ。金融当局も引き締め的な政策スタンスを当分崩せそうにない。
 一方、対米輸出などはいつ尻すぼみになってもおかしくはない。中国通関当局が10日発表した2月の貿易収支は黒字額(輸出超過額)が85億5500万ドル程度と市場予想平均を大幅に下回った。米サブプライム(信用力の低い個人)向け住宅ローン市場発の混乱が遅ればせながら及んだ格好。他の新興国向け輸出や中国側の輸出抑制策、春節(旧正月)休暇の季節要因を考慮しても不安は残る。
 また、金融引き締め策はある程度の通貨高を容認しなければ効果があらわれない。為替介入への風当たりが強いこともあり、人民元の対米ドル相場は10日、1米ドル=7.1020元台で終えて05年7月21日の元切り上げ後の最高値を更新。今後も徐々に下値を切り上げる見込みだ。貿易依存型の企業心理が悲観論に傾きかねない中、このまま物価高基調が持続するようなら政策面ではかなり厳しい状況に追い込まれる。
 中国は急速な経済発展に伴う貧富の差に加え、失業率の増加といった構造問題も抱える。北京オリンピックの「特需」後の先行き不透明感も晴れてはいない。ある外国投資信託のファンドマネジャーは「運用側も今後は『機動的対応』を前提に取り組む必要がある」と気を引き締めていた。(GI 今 晶)

2008年3月11日(火)13:31 個別ページ

米ドル安、「パリティ」続出なるか?

 外国為替市場では米ドルの下落局面が長期化するとの予想が増えている。米国内の景況感低迷が続く中、米連邦準備理事会(FRB)高官も相次いで厳しい景気認識を示しており、現段階では利下げ打ち止めと経済の立ち直りの時期が見通せないためだ。米ドル売りの受け皿通貨には当然、濃淡があり、独自のプラス材料が多ければ多いほど推進力が高まることになる。
 焦点の一つは米ドルと対等以上に渡りあえる通貨がいくつ登場するかだ。円や英ポンドは基準の違いがあるため除外すると、ユーロは既に1ユーロ=1ドルの等価水準(パリティ)を大幅に上回っており、5日には一時1.53ドル台と導入来の高値を更新した。カナダドルは昨年の好況局面で1米ドル=1カナダドルを突破。その後はカナダ経済が米景気減速の影響を受けつつあるだけに失速気味だが、それでもパリティ付近の水準は維持している。
 次の「等価候補」はスイスフランとオーストラリア(豪)ドルだ。ドル・スイスフラン相場は3日に1ドル=1.0300スイスフランに迫り、過去最安値を更新。豪ドル・米ドルは前週、1豪ドル=0.95米ドル台乗せをうかがうほどになり1984年以来、約24年ぶりの豪ドル高・米ドル安水準を付けた。豪ドルが数少ない「好景気・高金利国通貨」とみなされている点やスイスフランに「経常黒字国通貨で混乱時にも強い」との定評があることから市場では「数カ月以内にパリティ試しの機会はある」との予測がちらほら出ている。
 問題はスイス、豪州ともに今後も米ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)悪化と無縁でいられるか確信が持てないことだ。とりわけ豪金融政策は、かじ取りを誤れば金利水準の高さがあだになり、通貨高のマイナス効果も加わるためダメージが大きい。豪ドル取引で投機資金の比率が上がりやすいことも不安要因だ。
 また、スイス景気は隣国ユーロ圏の帰すうに左右される。完全な「非連動化」(デカップリング)の実現はかなり難しい。
 ある邦銀のベテラン外為ディーラーは「米ドルの基軸通貨性や求心力が消えるわけではなく、中長期スタンスのマネーはドル安が一定程度進んだ段階で必ず押し目待ちの買いに動く」と話す。ここからの米ドル売りは反動時の対応を十分シミュレーションしたうえで臨む必要がありそうだ。〔GI 今 晶〕

2008年3月 6日(木)18:27 個別ページ

FRB、インフレ制御どこまで?

米金融当局は物価制御をいったん後回しにした——。外国為替市場などでは前週後半、こんな見方が一時広がった。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が2月27—28日の議会証言で、景気慎重論と利下げ継続の姿勢を示すとともにドル下落を容認したと解釈可能なコメントを残したからだ。
 通貨安は教科書的には低金利政策と整合性がとれる。半面、国際商品市場でドル建ての決済価格に割安感が生じるため、エネルギー需給の引き締まり傾向は続く公算が大きい。それを承知のうえで実体経済への配慮を優先することを「リフレーション策」などと呼ぶが、失敗すれば不況とインフレとが同時に進む「スタグフレーション」の呼び水になりかねない。
 状況証拠も厳しい。2月29日発表になった1月の米個人消費支出(PCE)で、物価指標であるエネルギーと食品を除いたコアのPCEデフレーターは前年同月比で2.2%上昇と、FRBが妥当とする1—2%の範囲を3カ月連続で上振れ。同日発表された2月の米消費者態度指数(ミシガン大調査、確報値)は総合が悪化した一方でインフレ関連の数値は高かった。
 米サプライマネジメント協会(ISM)が3日発表した2月の製造業景気指数は48.3と前月の50.7から2.4ポイント下がり、好不況の境目とされる50を再び下回った。内訳の仕入価格指数は75.5と1月よりも低かったが、低下の幅は0.5ポイントと小さい。1月は2006年7月以来の高水準だった。小売側にどの程度転嫁されるかによるとはいえ、スタグフレーションの芽は消えていないことがわかる。
 また、信用収縮が米経済の足かせになる構図にも特に変化はない。金融保証会社(モノライン)の再建策を巡るゴタゴタも持続している。石油輸出国機構(OPEC)加盟国などの早期増産も見込みづらい中、最近の商品高で膨張した投機マネーの一角が原油や貴金属買い、ドル売りにさらに傾くことになればどうなるか。米金融政策に光明を見出すまでには相当に時間がかかりそうだ。(GI 今 晶)

2008年3月 4日(火)14:47 個別ページ

なお続く「ドル・ペッグ制」ウオッチ

外国為替市場では中東湾岸諸国の通貨政策に対する注目度が依然として高い。2007年後半以降の「隠れた人気テーマ」の一つといっていい。米ドル連動型の為替制度(ドル・ペッグ制)を採用している国がオイルマネー主導のインフレとシステム維持との「板挟み」にどの程度耐えられるかが焦点だ。
 ドル・ペッグ制では金融面の施策も米国とあわせるケースが多い。金利格差の変化は国際リスクマネーの行動パターンを左右しかねないためだ。中東各国が足元の米継続利下げに静観を決め込んだ場合、「ドル離れ」を起こした投資資金はアラブ通貨建て資産にも流れ込むはず。これにヘッジファンドなどが便乗するようなら当局はかなり厳しい状況に追い込まれる。
 一方、金利低下・通貨高阻止は「カネ余り」や輸入物価の上昇をもたらす。教科書的なインフレの要因だ。制度を守ることに固執するわけにもいかない。
 打開策の一つはクウェートが既に導入している複数の主要通貨バスケットに連動する方式。並行して外貨準備に占める米国債や政府機関債の構成比率を徐々に見直したり、対米投資を継続するさいには政府系ファンド(SWF)を通じて高収益を狙ったりすることになる。ドルの急落時に既存のドル資産が目減りするリスクを回避するうえでも有効とされる。
 米連邦準備理事会(FRB)前議長のグリーンスパン氏は25日、サウジアラビアでの講演で「ペッグ制廃止はインフレとの戦いにプラスに働く公算がある」と発言。通貨バスケット制への移行を暗に勧めた。出席者の中にも支持する声があったという。
 当のサウジアラビアは現在、スタンス変更には極めて消極的。各メディアの報道によると、17日開催した政策担当者の会議では新たな方針は打ち出されずじまいだった。ただドルはその後27日、対ユーロで一時1ユーロ=1.51ドル台半ばとユーロ導入来の安値を更新するなど下落歩調が一層鮮明になっている。以前にもまして対応が後手に回る可能性が意識されているかもしれない。〔GI 今 晶〕

2008年2月28日(木)14:37 個別ページ
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