FXブログ 今晶の「THE・為替記者!」


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欧米中間期末、波風やや和らぐ

 欧米では6月の中間決算期末が間近になった。資金需給が引き締まる場面はたびたび見られるものの、信用不安の真っただ中にあった3月の四半期末に比べると緊迫感は弱め。背後では欧米金融当局が2007年後半以降に打ち出した流動性対策や米証券大手ベアー・スターンズの救済策がひとまず効いている。
 英国銀行協会(BBA)が毎営業日公表するロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は米ドル、ユーロがここにきて上昇基調だが、物価重視型の欧米金融政策の可能性を織り込んだものと解釈される。欧米銀行の間で過去の「過少申告」を修正する動きが出たことも影響した。一方、米ドルのLIBOR3カ月物と同期間の米財務省証券(TB)利回りとの格差は25日時点で1%前後と3月末の1.4%弱よりも縮まった。
 短期ゾーンの債券が利上げ観測の変化に反応しやすい点を多少考慮しても、米住宅や資産担保証券(ABS)市場、各国株価の先行き不透明感が残るにもかかわらず「質への逃避」には歯止めがかかっている。
 欧米金融機関の資本増強もペースは緩やかながらも進行した。資源産出国や商品系ファンドが原油高などで膨らんだお金の行き先を求めていることに支えられた面も濃い。有り金全部を現預金で保有するわけにはいかないからだ。米実体経済の動向次第で「時間との勝負」に逆戻りする恐れはあるが、マネーの逆回転がパニックにまでいたるリスクは現時点では小さい。
 また欧米銀の中には「低金利国」日本での資金調達に傾くところも少なくない。例えばサムライ債と呼ばれる円建て債券を発行したさい、通貨スワップ(円と他の通貨建ての債権・債務を交換する取引)で為替差損を回避した場合でもコスト面で魅力的なのだろう。外国為替市場では日本勢の高利回り志向を刺激することで円安と欧米、オセアニア通貨高を演出した。
 ある外国証券のクレジット・アナリストは「世界の投資家はかつて格付け会社の評価に依存し過ぎた反省から、運用方針の再検討を進めてきた」と述べたうえで「現在の行動が慎重な取捨選択の結果とすれば悪い話ではない」と話す。米景気などの帰すうを見極めるための心理的余裕は広がりそうな雲行きだ。(今 晶)

2008年6月26日(木)12:58 個別ページ

円、「過剰流動性」の行く末

 国際金融市場では商品相場の先高観が依然として強い。投機筋の一角はこのところ原油や貴金属、穀物買い戦略などに傾き、好成績を収めるとともにリスク許容度が上昇。借り入れベースで運用資産を積み上げる動きも規模は控えめながらも再開している。最低金利国の日本の円は「資金源」として存在感が増した。
 円原資のポートフォリオはユーロ圏や英国、オセアニア諸国の利回りが高い債券や預金も組み入れ対象だ。2007年半ばまでの「金利相場」が再現した気配もある。ユーロ・円は前週に一時1ユーロ=168円10銭台と07年7月以来の円安・ユーロ高水準まで強含み。導入来高値の168円94銭前後が視野に入った。スイスフランや米ドルなど調達通貨とみなされるグループに対しても円安の傾向が濃い。
 歯車が一気に狂わない限りはマネー拡大の流れと商品人気は衰えそうにない。
 日本勢にも便乗組が目立つ。外国為替証拠金取引(FX)や外貨建て投資信託を通じた個人・年金資金の海外流出にとどまらない。機関投資家は米住宅ローン絡みの資産残高を圧縮する半面、他の有利な運用先を求めて欧米の国債やヘッジファンド関連証券を物色している。巡り巡って原油高に一役かっているケースは多いはずだ。
 日銀が16日発表した08年1—3月期の資金循環統計(速報)によると、3月末の家計の金融資産残高は1489兆6000億円強と前年度末の1545兆円程度から約3.6%減少。世界株安の影響を受けたもので、1980年以降では最大のマイナス幅となった。株式・出資金の比率は07年3月末の13.0%から9.3%に失速した。それでも金額の大きさは変わらない。国内証券の顧客担当者などからは「円預金の低い利率に満足しなかった層はリスク資産に戻り始めている」との声が出ている。
 問題はこの後だ。日本発のお金がエネルギーや原材料価格高を助長した場合、輸入大国の自らの首を絞めかねない。世界の景気悪化となれば自動車メーカーなど輸出企業も打撃を被る。ある外国銀行のエコノミストは「日本は対外債権国だけにパニック的な通貨安への危機意識は必要ない」と前置きしたうえで「物価次第では円の防衛目的の介入姿勢を示したほうがよい状況も起こり得る」と真顔で語っていた。(今 晶)

2008年6月24日(火)17:03 個別ページ

英中銀、「両にらみ」姿勢崩さず

英国では景気と物価「両にらみ」の金融政策が継続している。英政策金利は19日時点で5.00%。主要7カ国の中では最も高いうえ、住宅セクターなどに不安の芽があるだけにおいそれと利上げには踏み切れない事情がある。かじ取りの難しさは顕著だ。
 英中銀イングランド銀行(BOE)のキング総裁は17日、5月の英消費者物価指数(CPI)の前年比伸び率が3.3%と目標上限の3%を突破したことを受けて英政府に書簡を送付。インフレ率は年内に4%を超える公算があると述べながらも「上昇の圧力は一時的にとどまる」との見方を示した。実体経済の悪化リスクを意識したもので、英金融市場では「英中銀はユーロ圏などよりも引き締め的施策に慎重」と受け止めて金利先物への買いや英ポンド売りにつながった。
 17日のポンド・ドル相場は日通し高値の1ポンド=1.96ドル台後半から1.94ドル台まで急落する場面があった。
 キング書簡には「金融政策委員会は物価高の影響で景気配慮型の対応を強く進められなかった」、「経済の急失速でCPI上昇率は目標値(現在の下限は1%)を下回る可能性も否定できない」との趣旨の記述もあった。いかに困難な状況に直面しているか理解してほしい——。そんな「本音」が見え隠れする。
 エコノミストの間では「イングランド銀は金利引き上げの観測が先走る事態を何よりも懸念している」との声も聞かれる。ユーロ圏では前週以降、過度の利上げ織り込みをけん制する高官コメントが相次ぎ、米国でもメディア報道などを通じて金利の先高観がかなり後退した。「発射台」が相対的に高い英国では一層神経質にならざるを得ないというわけだ。
 ある英国系証券では、原油価格の高止まり傾向が持続した場合、8月以降の利上げ余地は残るとしたうえで「BOEは景況感低迷の観点からインフレ期待を抑えるスタンスを保つとみられるため最終的には現行水準に回帰する」などと予想。物価重視派はよほどのことがない限り勢いづかないと読む。ポンドは円に対しては金利格差テーマの買いが続くかもしれないが、ドルに対しての「復権」は当分おぼつかないとの立場だ。(今 晶)

2008年6月19日(木)13:14 個別ページ

ユーロ、EU政治情勢にも関心

欧州の政治的な先行き不透明感が増している。アイルランドで13日、欧州連合(EU)の新たな基本条約となるリスボン条約の批准の是非を問う国民投票で、反対票が約53%と賛成の46%強を上回ったためだ。国際金融市場では統一通貨ユーロの行方に影を落とすものとして懸念する声が出ている。
 リスボン条約は2009年1月の発効を目指す。しかし加盟27カ国すべての批准が求められており、アイルランドの否決で当初の予定通りに進まないことが確実になった。欧州委員会では他の未批准国に手続き続行を促しながら事態打開の道を探る構えだが、アイルランドが「民意」を再び問うたとしても、現行の条約内容を維持したままで結果が変わる公算は小さい。状況は厳しいといえる。
 また、英国が続いて実施すると見られている議会投票への影響も避けられそうにない。

 アイルランドはユーロの導入国であり、中央銀行の総裁は欧州中央銀行(ECB)の理事を兼ねている。一連の動きがユーロ圏の通貨・金融政策を直接左右するわけではないものの、混乱が長引くようなら「信認」の面では痛手だ。仮にアイルランドがEUからの一部離脱にまで追い込まれた場合、07年以降のドル離れとユーロ物色の流れが変調しかねない。
 ある欧州系銀行のエコノミストは「ここ数年のユーロ高は『第二の基軸通貨』としてのユーロの地位向上が一因になっており、政治リスクに敏感な投資家層は確実に存在する」と読む。ドル先安観が以前に比べて後退している点も考慮すると、新興国マネーなどのドル建て資産の見直しペースが緩むきっかけになるかもしれない。
 とはいえ、ユーロの調整は欧輸出企業の国際競争力の面でプラス効果もある。ECBの引き締め的施策が景気の急減速をもたらす可能性も下がるはずだ。米国や他の国の経済が力強い成長軌道に戻るとの展望もまだ描けない。為替は「相対的評価」の世界。市場では「EU内の動揺がユーロの地盤沈下につながるとまでは言えない」といった冷静な意見が多いようだ。(今 晶)

2008年6月17日(火)18:17 個別ページ

日本マネーの「対外志向」健在

「低金利国」日本の投資家の外貨建て運用が再開している。財務省が11日発表した5月の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、対内株式が売りと買いの差し引きで9022億円の買い越しと2カ月連続で日本への資本流入超となる一方、対外中長期債は2兆283億円の買い越しで2カ月ぶりの流出超。銀行セクターで外債購入の意欲が戻ったほか、年金や個人マネーの物色が引き続き目立つ。
 流出額の内訳は銀行勘定が9744億円、生命保険会社が999億円で年金動向などをあらわす銀行の信託勘定は1954億円。個人の参加者関連の移動を映す金融商品取引業者と投資信託委託会社等の合計が9700億円強に達した。
 米国では最近、金融政策が景気配慮型から物価注視の姿勢に移行しつつあるとの雰囲気が広がっており、2008年中に利上げが始まるとの観測も浮上。短期債券のみならず長期ゾーンの利回りにもしばしば上昇圧力がかかっている。長短金利差も開き気味だ。大手銀が主に手掛ける「外—外方式」(外貨を直接借り入れて外国証券に振り向ける手法)や、生保主導で期間が3—6カ月物程度の先物の円買い・ドル売りと10年物国債などでの運用を組み合わせた「為替差損回避(ヘッジ)付き外債」には追い風となる。
 もっとも、これらは外国為替市場での直物の円売りを伴わないため円安の直接の要因にはならない。
 半面、他の項目では為替変動リスクをとった取引が主役。欧米での信用収縮のペースが緩み、先行き不安も3月までに比べると後退したことから持続性が高まった。
 日本でもインフレへの懸念は生じているものの、実体経済の失速に対する警戒感も同時に拡大しているだけに「政治サイドの抵抗などを考慮すれば引き締め的施策へのハードルは上がった」(欧州系証券のエコノミスト)。そうなると低金利からの脱却は当分先で、米欧に遅れをとることになりかねない。ある国内証券の顧客担当者は「2007年のサブプライム(返済能力の低い個人)向け住宅ローン絡みのゴタゴタで痛手を被った関係者の『外貨リターンマッチ』が増えるかもしれない」と期待していた。(今 晶)

2008年6月12日(木)12:18 個別ページ

「レバレッジ緩和」がパニック回避

外国為替市場ではここ数週間、低金利国通貨の円の上値が切り下がっている。対ドルも例外ではない。原油高などで投機マネーの一部が拡大する中、国際的な信用収縮がなおも小康状態を保っているためだ。欧米勢が借り入れベースで運用資産を増やす「レバレッジ投資」を総じて抑え、リスク許容度が悪化しづらい構図になった点も見逃せない。
 レバレッジ比率の低下は金融派生商品(デリバティブ)の分野で主に進んでいるもようだ。米国のサブプライム(返済能力の低い個人)向け住宅ローン問題発の混乱を誘発したとの反省からだ。例えば英HSBCホールディングスの経営幹部は5月30日に開いた株主総会で、「高レバレッジへの傾斜モデルはもはや受け入れられない時代だ」と指摘。成長よりも安定重視の施策に注力する姿勢を示した。
 また、ある大手投資銀は4—6月期のレバレッジ倍率が2—3倍程度緩むとの見通しを明らかにした。
 資産膨張型のビジネスは自らに有利な市場環境が持続した場合に強みを発揮する半面、反動には極めてもろい。差損回避(ヘッジ)の規模やリスクも大きく、不調に終われば傷口を広げてしまうことになりかねない。2007年秋以降、欧米金融機関のサブプライム絡みの損失が膨らんだ局面でもヘッジ戦略の失敗が響いた。
 そもそも資産担保証券(ABS)やレバレッジド・ローン(合併や買収のさいに利用される貸し出しで被買収企業の不動産やキャッシュフローをテコにしたもの)債権の一部のように適正価値の把握が困難で、格付け会社の評価が揺れがちな商品は融資の担保になじまない。「相場の右肩上がりを前提にした銀行・証券や投資ファンドの動きはバブルといっていい」(欧州系証券の債券ストラテジスト)。「脱レバレッジ」は当然の帰結といえる。
 金融セクターにとってデリバティブ関連での収益先細りは痛手。だが不透明な部分を取り除くことで守りやすさが増す。各国の流動性対策や米低金利政策が続いているうちに体勢を立て直すことも可能だろう。株式や外為市場では「マネー収縮の最悪期は過ぎた」との声が依然として多いようだ。(今 晶)

2008年6月10日(火)13:22 個別ページ

中国、「内憂」の影響度合い注視

国際金融市場では中国への注目度が改めて高まっている。四川省で5月に発生した地震などの「内憂」が実体経済にどの程度影響を及ぼすかが焦点。北京オリンピックが終了した後の景気動向を占ううえでも重要だろう。
 各通信社の報道によると、中国人民銀行(PBOC、中央銀行)傘下のシンクタンクは2日、四川大地震についてまとめたリポートを公表。「打撃を受けた地域の経済活動が国内総生産(GDP)に占める割合は小さい」としながらも「建設資材(の生産減に伴う)価格の上昇圧力は過小評価されるべきでない」と指摘した。米サブプライム(信用力の低い個人)向け住宅ローン問題発の世界的な景気減速に伴う輸出鈍化のリスクや、これまで実施した金融引き締め策の効果を見込むにもかかわらずインフレ抑制のスタンスは維持すべきとの立場だ。
 PBOCがこれに先立つ5月30日、地方財政に関する報告書で示した「物価高阻止が最優先課題」との見解とも平仄(ひょうそく)は合う。市場の一部にあった「中国人民銀は一時的にせよ緩和的な施策に傾くのではないか」との観測に対する答えでもある。人口の多い国だけに、日米欧などよりもインフレ期待が行き過ぎることへの警戒感は強いのかもしれない。
 また、中国企業はさまざまな国や地域とモノを取引している。世界経済の「なだれ現象」が起こらない限りダメージは最小限に抑えられるとの楽観ムードも残る。
 半面、以前に比べると景気のけん引役の面では心もとない。オリンピック絡みの「特需」一巡で反動が生じかねない情勢だ。
 ある外国銀行のエコノミストも「中国は政治体制の特殊性から日米欧の常識は当てはまらない」と前置きしつつ「それでも高成長や資産価格の上り歩調がこのまま持続するはずはない」と話す。仮に調整局面入りした場合の金融当局の手腕も未知数だという。経済が軟着陸に向かうかは依然として不透明だ。(今 晶)

2008年6月 5日(木)10:18 個別ページ

LIBOR問題、「玉虫色」決着?

欧米の短期金融市場では指標金利のあり方を巡るゴタゴタが継続している。英銀行協会(BBA)が毎営業日公表するロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に実態とかけ離れたデータが紛れ込みやすいとの懸念は消えていない。
 5月29日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は過去のLIBORについて、欧米の大手銀数行が実勢よりも低い金利を示したことで数値がゆがめられた公算もあると伝えた。この「疑惑」は既に3月、国際決済銀行(BIS)がリポートをまとめて指摘しており、BBAが追放措置までちらつかせながら調査・是正に乗り出していただけに新味は乏しい。とはいえ具体的な行名報道のインパクトは小さくはないはずだ。
 ところがBBAは翌5月30日、LIBORの算出方法や提示銀行の変更を見送ることを表明したと報じられた。「監視強化で十分に対応可能」との判断からだという。市場では「強硬姿勢を貫いて混乱を助長するよりもシステム安定を重視したためではないか」(欧州系銀行の資金担当ディーラー)との声が聞かれた。
 底流には提示側の「言い値」に相当程度は頼らざるを得ないという短期市場に特有の事情が見え隠れする。参加者の財務基盤や信用力、格付けがそれぞれ異なることから資金を貸し借りするさいのコストは高安まちまち。第三者が指標として妥当な水準はどこかを見定めるのは極めて難しい。ある外銀エコノミストは「問題となった『低金利』も適正だと抗弁されれば反論や検証は困難だろう」と話す。
 一連の過少申告が例えば3—4月、米証券大手ベアー・スターンズの経営危機が判明した後の動揺収束を促したとすればマイナス面ばかりとも言い切れない。企業などでLIBOR基準でお金を借りたところなどにもメリットはあろう。半面、金融機関の過度の「強がり」には体力低下の危険がつきまとう。反動で過大な報告が相次ぐ恐れもある。今後の信用収縮の緩和度合いにもよるが、自主規制に依存しがちな現体制は結局、大幅な見直しを余儀なくされるかもしれない。(今 晶)

2008年6月 3日(火)12:43 個別ページ

「格付け依存」体質に修正機運

 国際金融市場では有価証券などの「格付け」のあり方と活用方法を巡る議論が広がり始めている。欧米で2007年半ば以降、サブプライム(返済能力の低い個人)向け住宅ローン問題発の混乱が深刻化したさい、参加者の間で生まれた「サブプライム関連債券の購入時に大手格付け会社の高評価を鵜呑みにし過ぎた」といった反省に基づく。リスク資産での運用を続けるためには避けては通れない道だ。
 投資家がポートフィリオに占める株式や社債、金融派生商品(デリバティブ)の構成比率を決める場合、リスクの客観的な判断基準として欧米格付け会社の「お墨付き」を利用するケースが少なくない。最上格なら組み入れの優先度は上がる。通貨の割合と為替差損回避(ヘッジ)の是非は各国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)がどう見られているかで結論が変わることになる。
 ここ数年間はデリバティブ絡みの商品の仕組みが複雑になった影響もあって「格付け依存度」は高まりやすい状況だった。日本勢も例外ではない。サブプライム証券の人気が以前強かった一因として、関わっている金融保証会社(モノライン)が軒並み優れた格付けを取得していたことも挙げられる。
 しかし、完璧な目利きなどあり得ない。08年初めのモノライン危機と信用収縮の加速などでそのことを再認識した関係者は多いはずだ。
 人為的なミスを見過ごしたり放置したりする可能性も否定できない。21日付英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は米ムーディーズ・インベスターズ・サービスが定率債務証券(CPDO)と呼ばれる合成債務担保証券(CDO)の派生型債券にコンピューターの不具合で不適切な評価を与えたと報道。米証券取引委員会(SEC)が調査に乗り出す騒ぎになった。
 CDOのグループは多様な債権をかき集めて組成されるだけに、価値が変動したとしても早期把握が難しいことからしばしば問題になる。そもそも価格が適正かの検証すら困難なものも存在する。
 幸い、FT報道がパニック反応を引き起こした形跡は今のところ目立たない。最近の原油高などの恩恵で投機資金が余力を保っているためだろう。落ち着いて格付けへの対処スタンスを見直す絶好の機会かもしれない。(今 晶)

2008年5月29日(木)15:19 個別ページ

スイス中銀、信用収縮に警戒保つ

 国際金融市場では信用収縮の小康状態が続く一方、今後の欧米景気の動向次第では、大手銀行や証券セクター発の混乱が再燃しかねないとの懸念も消えていない。各国の当局も以前ほどではないにせよ危機管理モードを維持。英米やユーロ圏に挟まれた「金融立国」であるスイスも例外ではない。
 スイス国立銀行(SNB、中央銀行)のロート総裁は前週末23日の講演で、今後の政策運営について「問題がある民間銀の財務内容の改善を支援する目的で一時的、例外的に過度のリスク持ち高の形成を余儀なくされる公算がある」、「金融システムの安定は中銀の収益性(健全性)確保よりも優先される」などと発言。信用不安の拡大阻止に万全を期す考えを示した。ロート氏は「流動性供給などの施策がインフレにつながらないよう配慮したい」との趣旨の意見も述べたが、英米やユーロ圏当局の高官よりも物価上昇への警戒トーンは弱めだ。
 このコメントに先立つ19日、SNBのヒルデブランド副総裁は「信用危機は既に後半戦に突入した」との見解を表明したうえで「大手銀2行はより大きな『緩衝材』を備える必要がある」と語っていた。銀行間市場で借り入れた資金などを元手に資産が積み上がり、自己資本の比率低下の可能性が残る現状を軽視すべきではないというわけだ。
 スイスの政策金利である3カ月物のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の誘導目標中心値は27日時点で2.75%。先進国中では日本の0.50%、米国の2.00%に次ぐ低さで、本来なら物価重視の姿勢に傾くべきかもしれない。半面、スイスは「永世中立国」としての存在感が引き続き強く、有事のさいには世界各国からお金が流れ込む。底流には金融機関への信認がある。スイス国立銀がシステム管理を優先するケースがひんぱんに生じたとしても不思議ではない。
 またスイスフランが「有事に強い通貨」の面目を保ち、価値が一定の範囲に落ち着けば輸入インフレの圧力が後退。政策面での整合性はとれるようになる。思惑通りに事が運ぶかは現時点ではまだ不透明だが、英米などに比べると不況下の物価高(スタグフレーション)に陥る恐れは小さい。(今 晶)

2008年5月27日(火)11:04 個別ページ
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