FXブログ 今晶の「THE・為替記者!」

2008年5月アーカイブ


「格付け依存」体質に修正機運

 国際金融市場では有価証券などの「格付け」のあり方と活用方法を巡る議論が広がり始めている。欧米で2007年半ば以降、サブプライム(返済能力の低い個人)向け住宅ローン問題発の混乱が深刻化したさい、参加者の間で生まれた「サブプライム関連債券の購入時に大手格付け会社の高評価を鵜呑みにし過ぎた」といった反省に基づく。リスク資産での運用を続けるためには避けては通れない道だ。
 投資家がポートフィリオに占める株式や社債、金融派生商品(デリバティブ)の構成比率を決める場合、リスクの客観的な判断基準として欧米格付け会社の「お墨付き」を利用するケースが少なくない。最上格なら組み入れの優先度は上がる。通貨の割合と為替差損回避(ヘッジ)の是非は各国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)がどう見られているかで結論が変わることになる。
 ここ数年間はデリバティブ絡みの商品の仕組みが複雑になった影響もあって「格付け依存度」は高まりやすい状況だった。日本勢も例外ではない。サブプライム証券の人気が以前強かった一因として、関わっている金融保証会社(モノライン)が軒並み優れた格付けを取得していたことも挙げられる。
 しかし、完璧な目利きなどあり得ない。08年初めのモノライン危機と信用収縮の加速などでそのことを再認識した関係者は多いはずだ。
 人為的なミスを見過ごしたり放置したりする可能性も否定できない。21日付英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は米ムーディーズ・インベスターズ・サービスが定率債務証券(CPDO)と呼ばれる合成債務担保証券(CDO)の派生型債券にコンピューターの不具合で不適切な評価を与えたと報道。米証券取引委員会(SEC)が調査に乗り出す騒ぎになった。
 CDOのグループは多様な債権をかき集めて組成されるだけに、価値が変動したとしても早期把握が難しいことからしばしば問題になる。そもそも価格が適正かの検証すら困難なものも存在する。
 幸い、FT報道がパニック反応を引き起こした形跡は今のところ目立たない。最近の原油高などの恩恵で投機資金が余力を保っているためだろう。落ち着いて格付けへの対処スタンスを見直す絶好の機会かもしれない。(今 晶)

2008年5月29日(木)15:19 個別ページ

スイス中銀、信用収縮に警戒保つ

 国際金融市場では信用収縮の小康状態が続く一方、今後の欧米景気の動向次第では、大手銀行や証券セクター発の混乱が再燃しかねないとの懸念も消えていない。各国の当局も以前ほどではないにせよ危機管理モードを維持。英米やユーロ圏に挟まれた「金融立国」であるスイスも例外ではない。
 スイス国立銀行(SNB、中央銀行)のロート総裁は前週末23日の講演で、今後の政策運営について「問題がある民間銀の財務内容の改善を支援する目的で一時的、例外的に過度のリスク持ち高の形成を余儀なくされる公算がある」、「金融システムの安定は中銀の収益性(健全性)確保よりも優先される」などと発言。信用不安の拡大阻止に万全を期す考えを示した。ロート氏は「流動性供給などの施策がインフレにつながらないよう配慮したい」との趣旨の意見も述べたが、英米やユーロ圏当局の高官よりも物価上昇への警戒トーンは弱めだ。
 このコメントに先立つ19日、SNBのヒルデブランド副総裁は「信用危機は既に後半戦に突入した」との見解を表明したうえで「大手銀2行はより大きな『緩衝材』を備える必要がある」と語っていた。銀行間市場で借り入れた資金などを元手に資産が積み上がり、自己資本の比率低下の可能性が残る現状を軽視すべきではないというわけだ。
 スイスの政策金利である3カ月物のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の誘導目標中心値は27日時点で2.75%。先進国中では日本の0.50%、米国の2.00%に次ぐ低さで、本来なら物価重視の姿勢に傾くべきかもしれない。半面、スイスは「永世中立国」としての存在感が引き続き強く、有事のさいには世界各国からお金が流れ込む。底流には金融機関への信認がある。スイス国立銀がシステム管理を優先するケースがひんぱんに生じたとしても不思議ではない。
 またスイスフランが「有事に強い通貨」の面目を保ち、価値が一定の範囲に落ち着けば輸入インフレの圧力が後退。政策面での整合性はとれるようになる。思惑通りに事が運ぶかは現時点ではまだ不透明だが、英米などに比べると不況下の物価高(スタグフレーション)に陥る恐れは小さい。(今 晶)

2008年5月27日(火)11:04 個別ページ

「ヘッジ付き外債」拡大観測

財務省が前週14日に発表した4月分の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)には一種の「意外感」があった。対外中長期債が銀行主導で8カ月ぶりの売り越し(7613億円の日本への資本流入超)だった半面、生命保険会社が2008年の新年度入りしたばかりにもかかわらず外債を1兆円超も買い越したからだ。外国為替相場への影響度はどう読むべきだろうか。
 銀行部門の対外投資は欧米の短期金融市場で外貨を直接借り入れて外国証券に振り向ける「外—外」方式が主流。円の売り買いはあまり伴わない。一方、生保は年金や個人マネーなどと同様に円原資の運用が基本で、為替差損回避(ヘッジ)の有無やヘッジ比率の高低によって外為市場での直物の円売り圧力は変わる。
 いわゆる「ヘッジ付き外債」では期間が3—6カ月物程度の為替予約(先物の円買い・外貨売り)を同時に締結することが多い。銀行手数料などを除いた予約コストはおおむね同期間の日本と欧米、オセアニア諸国などとの金利格差を反映しており、購入対象となる証券から得られる収入よりも安ければ安いほど需要は増える。07年の米国や最近のユーロ圏各国の国債のように長短期の金利差が小さいと妙味は乏しい。
 しかし米国では金融当局が07年秋以降、矢継ぎ早の利下げに踏み切ったことを受け、米政策金利は22日時点で2.00%。10年物国債利回りとの差は1.50%を超えている。日本の10年物国債利回りが1.60%前後で推移していることや日銀の利上げ実施が当分先送りされそうな点を考慮すれば「ヘッジ外債は分散投資の観点では魅力がある」といった解釈も可能だろう。
 また、昨年持ち高を減らしただけに残高を新たに積み増す余地もありそうな気配だ。 

 米景気や株価の悲観論緩和でリスク許容度が高まった分、「生保の円売り」が個人向け外債や外貨預金の活況などと重なって3月下旬以降の円高一服を演出した面はあるかもしれない。ただ、このまま円安のけん引役となる事態までは想定しづらい。(今 晶)

2008年5月22日(木)11:14 個別ページ

アイスランド、経済「軟着陸」に苦戦

欧州アイスランドの経済環境が厳しさを増している。高金利政策を長い間持続しているにもかかわらず輸入品などに後押しされたインフレの傾向に歯止めがかからない。信用収縮も深刻化。事態収拾に向けた政府・中央銀行の悪戦苦闘が続く。
 アイスランドの政策金利は4月に0.50%引き上げられて15.50%と過去最高の水準を更新したが、同月のインフレ率は十数年ぶりの高水準となる11%台後半と引き締め効果がまったくあらわれていない。5月22日にはさらに0.50%程度の追加利上げが決まる見通し。不況下の物価高(スタグフレーション)懸念が払しょくされないことから長期スタンスの投資資金の流入は滞ったままだ。
 またスウェーデンのリクスバンク(中央銀行)などによると、アイスランド中銀は前週末16日、スウェーデンとデンマーク、ノルウェーの3中銀と各5億ユーロ(総額15億ユーロ、約2400億円)の通貨スワップ協定を結んだ。ユーロの短期金融市場で4月以降、アイスランド系民間銀行への「貸し渋り」が鮮明になる中、外貨準備高が4月末時点で2000億クローナ強(約2900億円)と支援には心もとない額だったことを受けた措置と見られる。信用不安の拡大が一段のクローナ安進行と輸入物価の上昇を促すという「負の連鎖」をどうにかして断ち切りたいとの意思がうかがえる。
 とはいえ、一連の施策は対症療法の域を出ていない。各金融機関が資本増強や不良債権の処理を通じた貸借対照表(バランスシート)改善に乗り出さない限りは抜本的な解決は難しい。そもそもアイスランドは国内株式や債券市場の規模が小さいため、大手銀の外貨建て資産の保有比率は伝統的に高い。ユーロなどの流動性を多少供給したところで「焼け石に水」の面もある。
 アイスランド中銀内の危機感は相当に強いようで、チーフエコノミストのシグバトスン氏は9日付一部独紙とのインタビューで、アイスランド経済には柔軟性があると自信を示す一方で「クローナの信認醸成に失敗すれば壊滅的状況に陥る」と警告。安定を取り戻すためには「早期の欧州連合(EU)加盟とユーロ導入が必要」と語った。小国の苦悩がにじむ。(今 晶)

2008年5月20日(火)10:52 個別ページ

「大相場狙い」通貨オプションの現在

外国為替市場では4月中旬以降、米景気や株価悲観論の修正が進むとともに円の強気派やドル弱気派の勢力が弱まった。ドルの対円相場はこのところ1ドル=102—105円台で底堅い。将来の為替変動を予測する通貨オプション市場でも円高・ドル安方向への波乱前提の取引は減少傾向にある。
 ドル・円の予想変動率(インプライド・ボラティリティー)1カ月物は3月17日、直物が一時1ドル=95円70銭台と1995年8月以来の安値を付けたタイミングで20%台まで急上昇。2007年8月17日以来、7カ月ぶりの高水準になった。半面、14日時点では11%台だ。07年8月17日、08年3月17日のいずれも米金融システムや株式市場の動揺が激しかったころで、現在とはやや「隔世の感」がある。
 コントラリアン(流れに逆らって基調反転時の高収益をもくろむ投資家)が消えたわけではないものの、一発勝負を仕掛けるには機が熟していないと判断したようだ。
 例えばロング・ストラドル戦略。権利行使価格が同じで同一期間物の円・コール(買う権利)とプット(売る権利)を同額買い、設定水準とのかい離幅が広がれば広がるほど多額の利益を得られる。しかし、小幅な値動きにとどまるとオプションの購入費用の合計を限度として持ち出しになってしまう。ボラティリティー低下で競争相手が少ない分、コストが抑えられるとはいえ「勝率が上がらなければ意味はない」(邦銀のオプションディーラー)。
 また、ロング・ストラングルと呼ばれる行使価格が異なる同一期間の円・コールとプットを同額購入する手法もあるが、こちらは安上がりの割には損益分岐点が高め。直近のレンジをかなりダイナミックに外れるとの見通しが必要だ。ロング・ストラドルに比べると需要は強まりにくい。
 問題は一連の状況の持続性だ。ある外国銀行の顧客担当者は「最近はストラングルやストラドルの売りでオプション売却益の積み上げを狙うケースが増えた」と話す。相場が荒れたさいには損失拡大につながりかねないだけにリスク管理の面では危うい。多少の「揺り戻し」は想定すべきだろう。(今 晶)

2008年5月15日(木)12:38 個別ページ

英金融政策、景気配慮にやや傾斜か

英米では現在も住宅問題や信用収縮への不安が景況感改善を阻んでいる。金融当局はエネルギー価格などの動向を注視しつつも緩和スタンスを維持せざるを得ない。中でも英国は昨年以降、米国に比べると政策対応に出遅れ感がある分、景気への配慮ムードが強めになりやすい。
 英中銀イングランド銀行(BOE)はあす14日、四半期ごとの物価報告(インフレリポート)を明らかにする。12日発表の4月の英卸売物価指数が高水準だったほか、きょう13日発表になる同月の英消費者物価指数(CPI)で前年同月比の伸び率の市場予想平均は2.6%程度と目標上限の3%にじわりと近付く見通しだが、それでもエコノミストの間では「中銀が利下げ継続の選択肢を捨てる可能性はゼロに等しい」(英国系証券)との声が目立つ。
 BOEは7—8日に開いた金融政策委員会(MPC)では政策金利を5.00%に据え置いた。ただ直前に発表された生産や景況感をあらわす経済指標が悪化していたことから僅差(きんさ)での決定となった公算がある。
 MPC内の「物価重視派」も現行の金利水準にこだわっているわけではない。センタンス委員は前週、一部英誌に寄稿した論文で「物価には上振れと下振れ双方のリスクが存在する」と指摘。景気減速が長期化すればCPI上昇率が目標値を大幅に下回る事態も想定されると述べた。信用市場などの混迷度合いに応じた緩和措置を実施することに異論はないと受け取れる。
 しかも外国為替市場では最近、ユーロへの楽観見通しが後退しているために以前に比べるとポンド売り一辺倒の空気は薄れた。ポンド安の圧力緩和で輸入インフレへの懸念が弱まるようなら緩和的な金融政策には追い風だ。現時点では6月に0.25%の追加利下げが決まるとの予測が多い。
 金利引き下げは教科書的には通貨の下落要因だが、経済の早期立ち直りが見込めるとなれば逆の反応もあり得る。投資家や企業の「期待感醸成」にどの程度成功するかでポンドの方向性が定まることになろう。(今 晶)

2008年5月13日(火)15:38 個別ページ

豪中銀、ひとまず「忍」の一手も

 豪州では引き締め的な金融政策が続いている。原油相場などの先高見通しが根強いままだけに物価への警戒スタンスは緩められない。一方でインフレは景気の不安定要因にもなる。世界経済の失速懸念がなおもくすぶる中、当局にとっては腕の見せ所といえる。
 豪準備銀行(RBA、中央銀行)は6日、政策金利を現行の7.25%に据え置くことを決めたと発表した。スティーブンス総裁は声明で「総需要の伸びが2007年よりも鈍化しつつあることを示す証拠が増えている」と指摘。インフレ率は時間の経過とともに低下するとの見解を表明した。3月までの利上げ効果があらわれたとの評価でもあり、市場では「RBAは当面は金利据え置きに傾く公算が大きい」(豪州系銀行)などと受け止めて豪ドルが売られる場面もあった。
 しかし、事はそう単純ではない。スティーブンス総裁が提示したシナリオは「需要がさほど緩まなかったり賃金や(小売)価格に(エネルギー高などの)悪影響が及ぶ事態になったりした場合には変える」。結局は商品市況などの行方次第というわけだ。
 一連の「両にらみ」戦略には豪ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の底堅さへの自信がうかがえる。代表的な資源産出国としてのプライドもあろう。隣国ニュージーランドの中央銀行(NZ準備銀行)が7日、半期に一度の金融安定に関する報告書で景気のリスク分析にかなり紙幅を割いたのとは対照的だ。
 そもそも豪準備銀が政策判断のさいに重視する指標で、連邦統計局まとめの消費者物価指数をベースに算出した基調インフレ率は1—3月期の速報値が前年同期比で4%台に達していた。目標上限の3%とは1%以上の開きがある。無視はできない。
 ある欧州系証券の豪州担当エコノミストは「RBAの狙いはあくまでもインフレ期待の抑制で、物価高傾向がすんなり収まると考えているわけではない」と読む。米経済の立ち直りといった外部環境の改善が見られるようなら利上げ再開の可能性が高いという。世界的に株価が安定していることもあり、金利選好資金の豪州志向は比較的広がりやすい状況だ。(GI 今 晶)

2008年5月 8日(木)14:08 個別ページ

英中銀、施策継続も危うさ消えず

国際金融市場では米景気慎重論の緩和傾向が持続している。米政府・金融当局の施策効果に対する期待感が再燃したためで、他の経済圏への視線は相対的に厳しい。例えば英国は住宅問題や信用収縮の面で弱点が目立ち、中銀イングランド銀行(BOE)の政策対応にもかかわらず先行き懸念がくすぶる。
 BOEは4月21日、民間金融機関の資金調達コストの低下と「貸し渋り」解消を狙って新たな金融支援策を打ち出した。価値が低下気味だった住宅ローン担保証券(RMBS)を英国債と交換する仕組みで、期間は最長で3年間。総額500億ポンド(約10兆円)と規模も大きい。需要増となれば上限の額にはこだわらない考えだ。
 米連邦準備理事会(FRB)が3月に導入した米国債の貸し出し制度(TSLF、最長28日)に比べると長い目で見た資金繰りへの不安は後退しやすい。
 半面、担保RMBSの価格下落に伴う損失は差し入れた側が負う。銀行の貸借対照表(バランスシート)改善に直結するわけではない。住宅市場などの活力回復が進まなければ元の木阿弥(もくあみ)だ。景気への悪影響も避けられない。
 4月29日に発表になった3月の英住宅ローン承認件数は6万4000件と現行基準になった1999年1月以来で最低の水準まで減少。エコノミストの間では「英中銀の『時間稼ぎ』が成功するかは微妙」(英国系証券)との冷ややかな声がある。
 BOEのキング総裁は29日の議会証言で、インフレへの警戒姿勢を示すとともに「低成長になったからといって英経済の将来を悲観する必要はない」と強調。早期利下げの可能性には踏み込まなかった。ただ、市場参加者は額面通りには受け取っていない。金融政策委員会(MPC)のブランチフラワー委員が同日、スコットランドでの講演で「行動を起こさなければ手遅れになりかねない」との見解を示した直後のポンド売りでの反応などとは対照的だ。
 ブランチフラワー氏は4月開催のMPCで0.50%の大幅な金利引き下げを主張しており、29日の発言はいわば「持論」。目新しさはあまりない。それでも注目してしまうところに疑念の根深さがうかがえる。(GI 今 晶)

2008年5月 1日(木)13:11 個別ページ

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